神楽坂で開催された「本のフェス」で本を売る。日本出版クラブ会館、建物が立派すぎて、いきなり心細くなるも、古ツアさんとマスク堂さんの顔を見て、ちょっと安心する。
午前十時にスタートして、最初の一時間がまったく売れない。もしかしたら売り上げが参加費+本の送料にもならないかも……と不安になる。
まわりはミステリーやSFの宝の山状態。西荻の盛林堂書房さんのところにものすごく人が集まっていた。ほしい本が何冊かあったが、気がついたら残っていなかった。
わたしの隣のテーブルでは、北原尚彦さんが本を売っていた。北原さん、お客さんから聞かれたことにぜんぶ答える。すごい。ずいぶん前に、共通の知り合いの車で古本のチェーン店を北原さんとまわったことがあるのだが、そのときは探している本がかけ離れているせいか、いちども店の中ですれちがわなかった。こういうのは共存共栄というのだろうか、棲み分けというのだろうか。
途中、会場を抜け出し、同時開催の神楽坂一箱古本市を見に行く。宮内悠介さんのところでちょっと話をする。わたしのアンテナにはひっかからない不思議な本ばかり。
善國寺のわめぞブースでは、鶴見俊輔著『テレビのある風景』(マドラ出版、一九八五年刊)を買う。今年一月に開店した「BOOKS 青いカバ」が出していた本。場内の活気がすごい。楽しそう。南陀楼綾繁さんと古書現世の向井さんが、ふたりで並んでいる光景を見たのは、久しぶりのような気がする。
赤城神社でヨーヨーの世界チャンピオンのパフォーマンスを見る。
店番に戻らねばならず、ゆっくり回れなかったのが心残り。神楽坂にも小諸そばがあることを知る。
開始早々、諦め気分にひたっていたのだが、不思議なことに、昼の二時半すぎから、徐々に本が売れ出す。午後四時前後がピ−ク。目玉商品のつもりで並べた本が、その時間帯まで残っていたのだ。何がどう売れるのかさっぱりわからない。場所や来る人によって、手にとってもらえる本の傾向がまったくちがう。いろいろ勉強になった。
岡崎武志さんがふらっと来て、中央線の古本屋の話をしたり、つかだま書房さんから後藤明生の本の近況を聞いたり、フライの雑誌の堀内さんが親子で来てくれたり、方丈社の方々や金沢あうん堂さんと話ができたり、楽しい一日だった。
本の背表紙をたくさん見るだけで幸せな気分になる。