2017/05/05

十年一昔

 はじめての単行本の『古本暮らし』の刊行は二〇〇七年五月五日(書店に並んだのは四月二十八日)。十年。早い。

 本が出たとき、担当編集者の中川六平さんに「最初の一年は来た仕事をぜんぶ受けろ」といわれた。その教えを守ろうとしたのだが、神保町のラーメン店を三日で二十軒取材してほしい……という仕事は断った。

 長い人生、気合をいれて無理をしないといけない時期はある。しかし、無理は長く続かない。体力に自信がない身としては、持久戦の構えでいくしかない。そのことがわかったのは大きな収穫だった。

 本が出たのは十年前だが、ライターの仕事をはじめたのは、それより十八年前の一九八九年の五月の連休明けだ。そのころから荻原魚雷というペンネームで書評やコラムを書いている。
 かれこれ二十八年。時が経つのは早い。

 それはさておき、最初の単行本が出る前後、神経がひりひりしていた。なんてことのない言葉にも過敏に反応し、苛立った。以来、どんなに期日がせまっても、余裕をもって、のんびり作業することを心がけるようになった。それがいいのかどうかはわからないのだが……。

 十年単位でふりかえると、低迷や停滞をくりかえしつつも、昔と比べると、気持の切り替え方や力の抜き方はうまくなった気がする。

 火を絶やさないように、そして燃え尽きないように……地道に気長に根気よくやっていこうとおもっています。