月末、有志舎の季刊フリーペーパー『CROSS ROAD』(VOL.13)が届いた。連載「追分道中記」は三回目。今回は長野の追分の話を書いた。残り一回。街道に興味を持ちはじめころ、これまで通り過ぎてきた町を知りたいという気持が芽生えた。
通り過ぎていたのは町だけでなく、歴史や地理に関してもそうだ。知らない町を訪れ、その土地をすこしずつ知る。知識を得た後、その町を再訪するとまた見方もすこしずつ変わる。その体験が楽しい。
「中央公論.jp」の「私の好きな中公文庫」で「街道をめぐる3冊」というエッセイを書いた。武田泰淳『新・東海道五十三次』ほか——『新・東海道』の話はこの五、六年の間にあちこちで書きまくっている。まちがいなく中年以降の自分の人生を変えた本だ。
日本橋から品川、川崎と宿場町を順に旅をするのではなく、どんどん脱線していくのもいい。
新刊、佐野亨さんの『ディープヨコハマをあるく』(辰巳出版)が素晴らしい。横浜、町ごとに土地の雰囲気がちがい、一括りにできない。それぞれの町を掘り下げていけば、どこもすごく面白い。名著だ。街道と川の話が出てくると付箋を貼る。
『フライの雑誌』の最新号で横浜の大岡川の話を書いた。真金町(桂歌丸の生まれ故郷)から弘明寺あたりまで歩いた。真金町近辺、昔は運河が流れていたという話を桂歌丸の本で読み、それで歩きに行ったのである。
『ディープヨコハマをあるく』の第1章も大岡川の話だった。町と川の結びつきについてもいろいろ勉強になった。佐野さんも弘明寺駅の近辺に住んでいたことがあると書いてあった。川歩きの取材を通して、弘明寺は好きになった土地の一つだ。小さな商店街もよかった。旧鎌倉街道も近くを通っている。
第9章「神奈川をあるく」の子安・大口のところで足洗川(入江川の支流。現在は暗渠)の話も出てくる。浦島太郎が足を洗ったという伝承が残っている川なのだが、何度かこのあたりは歩いているのに気づかなかった。
七月三十日から尾道、倉敷、高松を旅行して昨晩帰京——。瀬戸内の旅の話はまた今度。