2022/07/28

文と本と旅と

 毎日ものを探してばかりだ。スクラップするためにとっておいた雑誌がない。読みかけの本が見当たらない。この時間をもっと有意義なことにつかいたい。

『文と本と旅と 上林曉精選随筆集』(山本善行編、中公文庫)は喫茶店に入ったときにすこしずつ読んでいた。ところが二日前から行方不明になり、今日ようやく見つけた(ふだんつかっていない鞄に入れっ放しになっていた)。「古木さん」を読む。
 古木さんは古木鐵太郎。編集者時代の上林曉の先輩で、高円寺、野方あたりに長く住んでいた。葛西善蔵「湖畔手記」の口述筆記を行ったのも古木である。上林は古木を「美しい市民」と評した。酒を「うまそうに飲む」とも。

 上林曉と古木鐵太郎は『現代作家印象記』(赤塚書房、一九三九年)という共著もある(けっこう入手難の本だ)。

 上林曉の随筆を読んでいると、文学にたいする真面目さに胸を打たれる。

《生命の通った小説を書けるようになるためには、生涯の精進を必要とするのだと覚悟を決めている》(「私の小説勉強」/同書)

 生涯の精進——わたしもそういう気持で何かに取り組みたい……とおもうのだが、すぐ楽なほうに流される。つい手間と時間のかかることを先送りしてしまう。