西部古書会館の古書展なしの週末——また昼寝夜起になる。日曜日、雨。温度計と湿度計のついた時計を見ると、湿度八〇%という数字だった。はじめて見た。
日中、散歩できなかったので、夜、早稲田通りを阿佐ケ谷方面に向って歩く。二十四時間営業のコインランドリーが増えている。夜間も営業しているスーパーをのぞいたら、栗のお菓子のコーナーがあった。栗ブーム? 散歩中「杉並区区制施行90周年」のポスターを見かけた。「90周年記念誌」が十月に発行されるらしいのだが、家に届くのか。最近、忘れてしまいそうなどうでもいいことを書き残したい欲が芽生えた。
休み中、田島列島『水は海に向かって流れる』(講談社、全三巻)を再読した。一巻が出たのが二〇一九年だから、(自分の感覚としては)つい最近の作品である。前作もよかった。
「会社は?」
「やめた! おじちゃんは現代人に向いてないし 風邪でも休めない現代人が大嫌い!」
主人公(高校生男子)と漫画家のおじ(母方の弟)の会話。物語の中を流れている時間が楽しく心地よく、登場人物たちの掛け合いも秀逸で頁をめくる手が止まらない。主人公はおじと同じシェアハウスに下宿し、学校に通う。シェアハウスには、主人公の過去と関わりのある年上の女性、主人公と同じ学校に通う女の子の兄(占い師)なども住んでいる。
もより駅の名前、店の名前(動物病院、中華屋、居酒屋)が、駄洒落になっていたことに気づく。焼き鳥を出す居酒屋の店名は「トリレンマ」。知らない言葉だったので、つい検索してしまった。商店街の激安店の名前は「ロシナンテ」。絵の中にちょこちょこ遊びがある
初読のときに読み飛ばしていたのは「福江のおばさん」という言葉——占い師の兄妹のおばで、妹のほうはたまに九州の方言っぽい言葉が出る。福江は長崎の五島列島の町の名で、作中に「五島うどん」の袋も描かれている。
主人公たちが暮らしている町は、都会(東京)っぽいが、それなりに自然もあり、電車は高架を走っていて、大きな川がある。川の名前というか、主人公たちが暮らす町のもより駅は部妻川駅(別冊マガジン=別マガの連載だったことからきている)なのだが、なんとなく多摩川に似ている気がする。
昔からわたしは漫画の中で川沿いを歩くシーンが好きで『水は海に向かって流れる』も堪能した。