2024/01/04

冲方丁の読むラジオ

 元日午前中、JR総武線高円寺駅のホーム(阿佐ケ谷寄り)から富士山を見る。雪が積もり、稜線らしきものが見える。湘南新宿ラインの武蔵小杉駅をすこし過ぎたところでも富士山が見えた。

 正月くらいはいいかと昼酒。夕方、能登半島地震のニュースを見る。

 今年の初読みは昨年十月刊の『サタデーエッセー 冲方丁の読むラジオ』(集英社文庫)——刊行後すぐ読んだので再読である。この本はNHKラジオ第一『マイあさ!』内の「サタデーエッセー」を元に書き下ろしたものだ。

 同書「約束されたレール」は著者が十四歳のときにネパールの学校で学んだことを紹介している。

《責任というと日本ではルールを守らせるという風にとらえがちだと思うんですけれど、そうではなく、「あなたのマストは何だ」と、先生方や大人たちが訊いてくるんですね。自分にとって今最もやるべきことは何だ、それがどう将来につながるのかと》

《最初から「自分はこれをやるべきだ」と自覚し、「いずれこれを成し遂げるために研鑽する」といった意識がなければ、ただ周囲の状況に合わせた受動的な態度ばかりが身についてしまいます》

 わたしはなるべく身軽に気楽に生きたいという欲求が強い。冲方さんの考え方や姿勢とはかなりちがうのだが、それでもこの文章は心に響いた。

 同書「正義感は正義ではない」に「正義中毒」という言葉が出てくる。

「正義感」は社会の維持や改善に有用だが、そうではないこともある——という趣旨のエッセイだ。
 インターネット上のまちがった情報をうっかり信じてしまい、拡散してしたり、無実の人を誹謗中傷したりする。

《お酒を飲むことがやめられなくなるのと同じように、「正義感」から行動することがやめられなくなるのであれば。立派な病気と考えるべきでしょう》

 冲方さんは「正義感」こそが、今もっとも警戒すべき感情だという。自分の正しさに酔い、人を裁く。「正義中毒」になると、その気持よさに抗えなくなる。だからこそ「正義感」の抑制が重要になる。自分の感情が不安定なときは情報と距離をとり、いったん熱を冷ます。

 わたしは散歩をすすめたい。