2007/04/30

第4回一箱古本市

 日曜日、昼起きて西部古書会館の古書展を見たあと(つい習性で……)、不忍ブックストリートの一箱古本市に行ってきた。天気もいいし、人もたくさん来ている。
「谷根千」(谷中・根津・千駄木)は、ふつうに町歩きするだけでも楽しい。
 出発はオヨヨ書林。景気づけに退屈文庫で久保田二郎の『ニューヨーク大散歩』(新潮文庫)を一冊。

 地図を見ながら歩いていると、次々と知りあいに声をかけられる。
「あ、こんにちは」
「どこがおもしろかったですか」
「なにかいい本、買えましたか」
 一箱古本市のようなイベントのおかげで、ほんとうにいろいろな人に会って話ができるようになった。それまでは古本祭に行っても、人とぶつかりながらひたすら古本を買うみたいなかんじだったからなあ。
 にぎやかでなごやかな新しい「古本文化」が誕生しているとおもった。

 喫茶「乱歩゜」に向かっていると、古書現世の向井さんと会い、「晶文社の宮里さんと退屈くんがいますよ」と教えてもらう。乱歩前では「森茉莉かい堂」さんで大岡昇平の『ゴルフ 酒 旅』(番町書房)を買わせていただく。

 そのあと「乱歩゜」で宮里さんと退屈くんと退屈くんの友だちと休憩していると、往来堂書店で『古本暮らし』(晶文社)を売っているのでサインをしてきてほしいと頼まれる。
 ハイ、よろこんで。
 とはいえ、人前で小学校高学年くらいのときに進歩が止まってしまった字を書くのはとても恥ずかしい。
 サインをすませ、店長に挨拶して逃げるように退散。途中、古本カフェ「BOUSINGOT」を見てから、古書ほうろうにむかう。あんまり荷物が重くなると困るなあとおもい、ブレーキをかけながら本を買っていたのだけど、古書ほうろうの前でスイッチがはいってしまい、「しのばずくんトート」の助けを借りる状態に。

 ほうろうの店内で古本を見ていたら古書往来座の瀬戸さんに会う。
「いい店だねえ」
 とわたしがいうと、
「ほんと、なんか小股がきゅっとするかんじですよね」と瀬戸さん。
 ですよねといわれても、わけがわからん。

 ほうろうでは、大木實の詩集『故郷』(櫻井書店)を買う。初版ではなく三版。序文は高村光太郎。後記には、尾崎一雄の名前も出てくる。

《いちどでいい
 聲をあげてこころから笑つてみたい
 
 それだけである
 それだけのことが私を悲しくする》( 願い )

 店を出て、ふらふら歩いていたら、書肆アクセスの畠中さん(すでに酔っ払っている)と会い、いっしょに「貸はらっぱ音地」に行く。
 お酒も売っているし、高野ひろしさんの写真展もやっているし、包丁とぎもやっているし、古書往来座の一箱はとんでもないことになっているし……。
 ここだけで月一回くらい小さなお祭りをやってもいいんじゃないかとおもうくらいよかった。
 あまりにも居心地がよくて完全にくつろいでしまう。
 おかげでほとんどの会場をまわることができず。計画性なし。

 午後六時からの打ち上げまですこし時間があったので、根津神社にふらっと行ってみたら縁日をやっていた。タコ焼きを買って、神社内の露店を見ていると、橋幸夫(と若草児童合唱団)の『子連れ狼/刺客道』(ビクター)のシングルレコードがあるではないか。値段は四百円。おもわず、手にとり、小島剛夕の描いたジャケットに見とれていたら、店のおじさんが「二百円でいいよ」という。もちろん買う。
「しとしとぴっちゃん・しとぴっちゃん・しとぴっちゃん」で有名な曲(作詞・小池一雄)だけど、二番のでだしは「ひょうひょうしゅるる・ひょうしゅるる・ひょうしゅるる」で、三番は「ぱきぱきぴきんこ・ぱきぴんこ・ぱきぴんこ」って知ってた?
 ちなみに「ぱきぴんこ」は、霜をふむ音である。

 根津神社から不忍通りふれあい館に向かって歩いていくと、「大阪の狆」あらため「高円寺の狆」こと前田青年が「今、仕事終わって来たところなんですよお」とかけよってくる。
 自分があまりしらない町の路上でこんなに知人に会うのはおもしろい。
 前田君といっしょに会場にはいり、各賞の受賞を見る。
 会場を出て、売り上げ点数二位の「犀は投げられた!」のメンバーと小宴会をする。
「わたしも売り上げ点数二位になったことあるんですよ。第1回の一箱古本市で」
「店の名前は何だったんですか?」
「……文壇高円寺です」

 さあ、次は「外市」だ。

 わたしも「わめぞ」(早稲田、目白、雑司が谷)の第二回外市の一箱ゲストとして参加することになりました。

「外、行く?」 第2回 古書往来座外市 〜軒下の小さな古本祭〜
日時:5月5日(土)〜6日(土) 雨天決行!
初日 5日 11:00〜22:00
二日目6日 11:00〜17:00(往来座は22:00まで営業)

場所:古書往来座
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3丁目8-1ニックハイム南池袋1階 古書 往来座
電話番号:03-5951-3939(電送番号同)

 会場では『古本暮らし』のサイン本も発売する予定です。