2009/01/15

割に合わぬ賭

 夕方から仕事。神保町の三省堂書店に行き、その向いの三崎市場でかすうどんを食う。最初はあまり期待していなかったのだが、好みの味だった。
 そのあとダイバーの古本市に行くと、NEGIさんがいた。
 すこし前に、NEGIさんが、職場で歩きながら本を読んでいたら、同僚に笑われたというような話を聞いた。こんどフルマラソンに挑戦するそうだが、たぶん本を読みながら走るのではないかとおもう。
 それはさておき、わたしもよく歩きながら読む。エスカレーターやエレベータに乗った瞬間、ほとんど無意識のうちに本を開く癖がついている。
 
 ここ数日、文庫化された『手塚治虫大全』(全三巻、光文社知恵の森文庫)を読み続けている。おもしろい。
 一巻の「若さの証明」というエッセイには、昔は「仕事即道楽」だったが、上京してからは執筆から趣味の部分が消えたと述懐している。漫画家のような人気稼業は、すこしの油断も妥協も許されない。

《きびしい競争に負けて、ぼくの同世代の描き手がどんどん脱落して行き、ぼくのまわりは一世代も二世代も若い後輩ばかりになっていった》

 手塚治虫は「若さ」とは「自信」だという。作品が失敗しても、連載が打ち切られても、「おれの作品は正しい」とおもい、「次の作品を見ていろよ」と新しい仕事にとりくんだ。

(……以下、『活字と自活』本の雑誌社所収)