先週の日曜日、西荻ブックーマークのときに関口良雄著『昔日の客』の復刻版(夏葉社)を買った。
店主の関口良雄は、正宗白鳥をこよなく愛し、尾崎一雄、上林暁、木山捷平と交遊があった。
わたしが一生手放したくないとおもっている作家ばかりだ。
『昔日の客』(三茶書房)は、古書価が一万円以上していた。稀少価値だけでなく、関口良雄の文章と人柄の魅力も大きいとおもう。
商売を度外視するくらい文学にほれこんでいた古本屋だった。
わたしもそうありたい。そういうところがないとおもしろくない。おもしろいことばかりやっていては生活できない。おもしろくないことばかりやっていては生きている甲斐がない。
夏葉社のSさんにも会った。若い編集者だと聞いていたのだが、まだ三十代前半だとはおもわなかった。一冊目がマラマッドの『レンブラントの帽子』、二冊目が『昔日の客』の復刊である。すごいとしかいいようがない。
ほんとうに自分が売りたいとおもう本を作る。出版人の理想だろう。きれいごとかもしれないけど、そうした理想を追求する姿勢は、かならず読者にも伝わる……はずだ。
昨日、東京堂書店に行ったら、平台のいちばん角に夏葉社版の『昔日の客』が平積になっていた。すでに京都の古書善行堂では四十七冊(※1)売れたとのこと。
《私は店を閉めたあとの、電灯を消した暗い土間の椅子に座り、商売ものの古本がぎっしりとつまった棚をながめるのが好きである。
昼間見るのとは別の感じで様々な意匠の本が目に映る。古い本には、作者の命と共に、その本の生まれた時代の感情といったものがこもっているように思われる》(「古本」/『昔日の客』)
(※1)さらに売れている。