2011/01/02

新年

 大晦日、三重に帰省……の予定をやめて、東京でのんびりする。
 近所を散歩。人も少ない。
 南口の氷川神社に初詣。

 今年最初の読書は、色川武大の『街は気まぐれヘソまがり』(徳間書店、一九八七年刊)。
 この本の「馬鹿な英雄がんばれ」というエッセイが心に響いた。

 昔、明治大学出身の清水という大酒呑みの投手がいた。二日酔いでふらふらにもかかわらず、試合で好投し、逆に酒を飲まないと調子が出ないと豪語していたらしい。
 色川武大は「身持ちを慎んで切磋琢磨する努力型」より「庶民のやれないような無茶をしながら能力を発揮するタイプ」を好んだ。

《で、そのまま長続きすればよいのだけれど、清水も何年かするうちに肥り出してきて、球威も落ち、南海から中日に移籍してからはコントロールでごまかす投手になって、凋落が速かった。
 それが困る。それでは、“ありときりぎりす”の教訓そのもので、面白くもなんともない》

 まあ、それが現実というものだろう。
 このエッセイに出てくる投手は清水秀雄。一九一八年島根県生まれ。左投左打。プロ野球在籍は一九四〇年〜一九五三年。生涯通算成績は一〇三勝一〇〇敗だった。

「馬鹿な英雄がんばれ」には元阪神の掛布選手の話も出てくる。シーズン前に酔っぱらい運転をした彼のことをオーナーが「掛布は馬鹿だ」と叩いた。しかし色川武大は掛布を擁護する。

《たしかに利口ではないかもしれないが、私などはそういう選手こそヒーローになる資格があると思っている。(中略)プロスポーツは馬鹿な英雄こそ歓迎し、大金を投じてかかえるべきで、小利口な英雄なんていらない》

 こうした感覚は、今の時代には通じにくいかもしれない。
 スポーツ選手にかぎらず、節制して小利口にならないと生きていくのはむずかしい。

 新年の抱負のようなものを書くつもりだったが、何もおもいつかない。
 二日酔いでだるい。