2012/11/15

ハリケーン・スミス

 先週、京都から薄花葉っぱの下村よう子さんが上京し(ピアノの中島さち子さんとのライブ。このコンビのステージはまた観たい)、東京ローカル・ホンクのクニさんも高円寺に遊びに来ていて、深夜、ペリカン時代で飲むことになった。
 そのときにクニさんがCDを何枚か持っていて、順番に聴かせてもらった。その中でジャケットを見たときから、気になっているアルバムがあった。

 ジーンズをはいたヒゲの中年男性が、二頭の馬のあいだで立っている。
 アルバムは、ハリケーン・スミスの『Don't Let it Die』。しゃがれ気味のやさしい声とちょっとレトロで哀調を帯びたメロディがたまらない。もともとビートルズのエンジニア、ピンク・フロイドのプロデューサーなどをしていた人らしい(アラン・パーソンズの経歴をおもいだした)。

 なぜか家にある洋楽のCDやレコードは一九七一年から七三年のあいだに集中しているのだが、この作品も一九七二年にリリースされたものだ。昔からわたしはこの時代の音質が好きなのである。

 アルバム発表時、彼は、四十九歳。スタジオの職人から「ハリケーン・スミス」という架空のキャラクターになり、ポップスターを目指すことになった。そして三曲連続でチャートに入るヒットを飛ばし、あっという間に消えた。

《これ以上、彼について書かせてくれる場所は、ハッキリ言って世界中のどこにも無いと思う。このライナーノーツ以外には》

 素晴らしく読みごたえのあるライナーノーツだった。解説は松永良平さん。
 CDは二十四曲入り。日本が世界初のCD化(二〇〇三年)だそうだ。

……発売時に知ることができなかったのは不覚である。