2017/09/09

雑文

 佐藤愛子と田辺聖子との対談集『男の結び目』(集英社文庫)を再読。後半、野坂昭如が参加している座談会にこんな発言があった。

《雑文っていうのは、こっち側にチョット引かなきゃ書けないんじゃないかとボクは思ってるんですけどね。自分の考えてることが全部正しいと思って書いてると、その雑文たるや、ものすごくツマらない》

 野坂昭如の言葉である。この「チョット引く」のがむずかしい。たぶん、引きすぎてもいけない。この対談集の単行本は一九七五年刊だから、四十年以上前の話。今でも自分が「全部正しい」というような言葉をよく目にする。余裕がないかんじがする。