『フライの雑誌』の最新号、ワイド特集「釣り人エッセイ 次の一手」は読ませる。人生を棒にふるくらい釣りに特化した生き方をしている人、マイペースに釣りを楽しむ人——それぞれの気持のこもった素晴らしいエッセイばかりだった。言葉の端々からフライフィッシングの楽しさを伝えたい、広めたいというおもいが溢れている。マニアックだけど、閉じていない。
フライフィッシングショップなごみの遠藤早都治さんの文章(「なるほど、そうやるのか」)は自分の経験を通して掴みとってきた言葉がいい。
《理屈抜きで楽しみたい。そういう気持ちもわかりますが、ある程度の段階になると、この趣味には地道な努力が必要なんだろうと気づくと思います》
わたしが『フライの雑誌』を知るきっかけになった真柄慎一さんも久しぶりに執筆している。誠実さが、そのまま面白さになる。あらためて稀有な書き手だとおもった。小学生になったばかりの息子と釣りをする話で……真柄さんが無職のころから読み続けてきたので感慨深い。ずっと書き続けてほしい。
中年になって、何か新しいことをはじめるのが億劫になっている。とくに人生の残り時間を考えると、年季がものをいう世界には、おいそれとは入っていけない。
今から釣りをはじめても初心者のまま一生終わっちゃうな、と。でも初心者から何かをはじめるというのは、いい経験になるのではないか。そんなことを五年くらいぐだぐだと考えているわけだ。考えているひまがあるなら、やれよ(という自分つっこみもマンネリ化してきた)。
どんな趣味でも「ある程度の段階」まで行くのは大変だ。その大変さを知れば知るほど、腰が重くなる。
来年こそはきっと。いやはや、一年経つのは早いなあ。