『閑な読書人』(晶文社)の中で、J=L・セルヴァン=シュレベール著『時間術』(榊原晃三訳、新潮社、一九八五年)という本を紹介した。
この本は鮎川信夫著『最後のコラム』(文藝春秋、一九八七年)で知った。当時、インターネットの古本屋もなく、海外の実用書を探すのはものすごく時間がかかった。本を探す時間も含めて読書の醍醐味だとおもっている。
『時間術』の要点は自分の時間をコントロールすることに尽きる。
《時をコントロールするとは、徹頭徹尾、自分自身をコントロールすることである》
鮎川信夫は時をコントロールするためには「まず、時間泥棒にノーというべきである。イエスと言って、好ましくない約束や義務を引き受けてはならない。イエスと言うよりノーと言う方がずっと容易だ。(中略)時間配分の優先権を、他人に与えてはならない」という。
二十代のわたしはこの考えに感銘を受け、実践した。そして仕事を干された。おかげで、時間について考える時間をたっぷり得ることができた。
十代のころはたいてい学校に通い、同じような時間をすごす。それでも時間のつかい方の差はつくが、その差は年々広がっていく。
二十代、三十代にどういう時間をすごしたかで、その人のあり方はほぼ決まってしまうといってもよい。
さらに四十代以降は時間のつかい方にくわえてお金のつかい方も重要になってくる。
時間とお金をおもしろくつかえる人になりたいものだ。