五月十五日、高円寺駅北口に日高屋がオープンした。以前の店舗はミスタードーナツだった(二月に閉店)。わたしが高円寺に引っ越してきた一九八九年にミスタードーナツはすでにあった。
部屋にエアコンがなかったころは夏の夕方、よくミスドで原稿を書いていたが、ここ数年は行ってなかった。店内がにぎやかすぎる、というか、若者が多すぎて……。
北口のドトールもいつの間にかなくなった。西部古書会館で古本を買ったあと、ちょくちょく行っていた。
高円寺在住の人以外にはどうでもいい話かもしれないが、どんな店がいつまであったか、けっこう忘れてしまうんですね。
喫茶店でいうと、ちびくろサンボとか琥珀とか、あった場所は覚えているのが、いつ閉店したのか記憶が曖昧になっている。
新刊のパリッコ著『酒場っ子』(スタンド・ブックス)を読んでいたら、いきなり高円寺の「大将」や「あかちょうちん」の話が出てきて、つい読みふけってしまった。
大将は高円寺の焼鳥屋で三店舗あるのだが、著者は北口の「3号店」のひいきのようだ(わたしもです)。
北口の「あかちょうちん」の記述もすごく細かい。バンドマンのたまり場の店で「僕の中の『中央線文化』の象徴のような存在でした」と記している。
《ここのボトルは一升瓶。「いいちこ」「二階堂」「ちょっぺん」「(黒)桜島」「白波」「黒霧島」の6種類で、各2900円。じゅうぶんお手頃ですよね? (中略)ただし、これで驚いていられないのがあかちょうちんの恐るべきところ。なんと毎週、日、月、金曜日、これらの焼酎ボトルが、すべて半額! つまり、1450円。あきらかに原価割れてるでしょ……》
さらに「ボトル会員」になると「3本目と5本目は半額、6本目は焼酎のみ無料です」。友人と飲みに行くと、誰かしらの半額か無料のボトルがあって激安で飲めた。
知り合いのミュージシャンが結婚パーティーの二次会を「あかちょうちん」でやったこともあった。後にも先にもあんなに寛ぐことができた結婚式の二次会はない(当然、普段着)。
「あかちょうちん」の閉店は二〇一〇年九月——。その前年の南口の「石狩亭」の名前も『酒場っ子』を読んで思い出した。明け方、何度か飲みに行った。