本日、梅崎春生著『カロや 愛猫作品集』(中公文庫)刊行。わたしは解説を担当しました。「猫の話」「カロ三代」など、梅崎春生の猫小説、猫随筆を収録(巻頭にはカロといっしょの梅崎春生の写真あり)。「カロ三代」は“猫叩き”の描写で読者からの批判が殺到した問題作でもある。文庫オリジナル。
長年、小説や随筆を読むとき、作品の時系列を気にせず読んできた。初出の時期を調べながら読むようになったのはここ数年のことだ。
作家によっては同じ文体で書き続ける人もいるが、梅崎春生は時期によって大きく変わる。『カロや』はその文体の変化も楽しめる作品集ではないかと……。
中公文庫は吉行淳之介編『ネコ・ロマンチスム』も発売。青銅社版の原本に内田百閒の「ネコ・ロマンチシズム」を増補。福永信さんの解説は「編者としての吉行淳之介」に言及していて読みごたえがあった。作品の並べ方にも編者の意志がある。この着眼点の吉行論は、はじめて読んだかもしれない。