……すこし前の話になるけど、十一月四日、アンディ・ルーニーが亡くなった。亡くなる一ヶ月前までテレビ出演していた。享年九十二。大往生といえるでしょう。
一九一九年一月十四日生まれ。アメリカのベストセラーコラムニストでコメンテーターだった。鮎川信夫は彼のことを「人生派コラムニスト」と定義した。
わたしは鮎川信夫経由でアンディ・ルーニーのコラムに親しむようになった。日本でいえば、山口瞳の『男性自身』のようなコラムを書いていた。
もっと後期のコラムも訳してほしいとおもいつつ、晶文社から一九八〇年代から九〇年代にかけて刊行された六冊くらいが何度も読み返すにはちょうどいい分量かなという気もする。
アンディ・ルーニーは、身辺雑記からスポーツ、文学、政治、経済、科学まで、守備範囲が広く、とぼけた口調、辛辣な毒舌、シリアスな文章の書き分けも鮮やかだった。
わたしの好きなアンディ・ルーニーの言葉をいくつか——。
●希望をもつこと、お祈りをすることは簡単だが、残念ながら懸命に努力をしたときほどはよい結果を生まない。
●それほど多くの人間がことさら自分の人生を変えられるわけではない。多かれ少なかれだれもがいまの自分に永遠に縛られている。しかし、そうでないふりをして前に進まなければならない(「人生の教訓」/『人生と(上手に)つきあう法』井上一馬訳)
*ものごとがうまく行かなかったら、熱いシャワーを浴びよ。
*長い眼で見れば、たとえまちがいが多くても決断は迅速にしたほうがいい。時間をかけて決断したことでも、まちがいの数でいえばそれほど変わりはしない(「一セントを貯めるのは時間の無駄」/『自己改善週間』北澤和彦訳)