2011/12/19

震災後に考えたこと その一

……地震と原発事故の後、何が変わり何が変わらなかったのか。時間ができたら、じっくり考えるつもりだった。
 といっても、まだ気持の整理がついていない。

 生活が落ち着いたのは五月下旬にマンションの壁の修理が終わったころかもしれない。余震のたびに、ひびが大きくなって、天井のパネルが落ちてくる。
 一時は引っ越しも考えた。引っ越しを考えているから、崩れた本を本棚に戻す作業をする気になれない。
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 三年くらい前から年に数回仙台に行くようになって、今回津波の大きな被害があった町も何度となく訪れていた。ふだん観光なんかしないのに、松島や塩釜に行って、フェリーにも乗った。

 震災後、自分の知っている風景が一変してしまった。沿岸部のかつて店や家があったはずの場所は更地になり、海から離れた場所でも打ち上げられた漁船、横転した車を見かけた。

 ある知りあいは「時間が経つにつれ、(被災地にいる)自分たちのことが忘れられてしまうのではないか」といっていた。
 家も仕事も失った人がいる。半壊の住居で暮らしている人もいる。家族を失った哀しみが癒えない人もいる。
 被災地では、日々の生活に追われて、安全な水だとか食べ物だとかそんなことを考える余裕のない人もたくさんいる。

 電気が止まって、情報がまったく入らなかった場所では、その日その日の食料やガソリンを手にいれることが最優先の課題だった。
 そういう経験をした人からすれば、原発の話をされても「今はそれどころではない」という気持になってもおかしくない。

 ものの感じ方には個人差はあるから一概にはいえないが、わたしの場合、心身が弱っていると、厳しい論調や語調の文章や言葉を受けつけなくなる。

(……続く)