無数の職業(や趣味)があり、そのひとつひとつに無数のやり方——「セオリー」があり、その「セオリー」にたいしても無数の「フォーム」がある。
無数の「セオリー」と無数の「フォーム」の中から、自分に合ったものを見つけ、身につける。理想の「フォーム」を身につけることがゴールではない。
《誰でも一生のうちで、気力体力が最高に充実するピークのときがあって、そういうときは(格や実力に応じて)強い。けれどもだからといっていつも強いとは限らない》(「プロはフォームの世界——の章」/『うらおもて人生録』)
アマチュアならピークがすぎて、勝てなくなったら、本業に戻ればいい。しかしプロはそうもいかない。
だから色川武大は「プロ」は「プロのセオリー」を身につける必要があるという。
《プロは持続を旨とすべし》
その日その日の成績ではなく、「年間打率」や「通算打率」を目標にする。
また「一一三の法則——の章」では、アマチュアとプロのちがいについて語っている。
トーナメントは、負けたらそれでおしまいだから「一発全力主義」でいい。プロは「持続を軸にする方式」でなくてはならない。
ようするに、続かない方法はいけない。そのためにはペース配分を考える必要がある。
しかし仕事があったりなかったりという状況では、なかなかペース配分を考えることはできない。どうしても「一発全力主義」になってしまう。でもそれで燃え尽きてしまったら、元も子もない。
わたしが(仕事の)ペース配分を考えるようになったのは三十代後半くらいで、それまではどちらかといえば、アマチュア方式でやっていた。
《もし、明日のことを考えないで、一回こっくりの勝負だったら、プロより強いアマチュアはたくさんいるだろうよ》(「一一三の法則――の章」)
プロは目先の結果より「フォーム」を重視する。どちらが正しいとか偉いとかということではない。
うらやましいくらいの素質がありながら、ペース配分を身につけることができずにやめてしまう人はけっこう多い。そういう人を見ると、もったいないとおもうし、残念だ。
(……続く)