子どものころ、永六輔作詞、中村八大作曲の「遠くへ行きたい」は、当時、誰が作って、誰が歌っているのかは知らなかったが、何となく好きな曲だった。
大人になって、自分が聴いていたのは、デューク・エイセスのバージョンであることを知った。ジェリー藤尾の「遠くへ行きたい」は違和感があった。
それはさておき、昔のわたしは、遠くに行くことより、知らない町に行きたい——そこで暮らすことが夢だった。知らない町に行けば、知らない自分になれるような気がしたからだ。
一日か二日か、ふらっとひとりで知らない町に行く。心細いが自由な気分になる。
仕事をして、自分の稼いだお金で旅がしたかった。これも子どものころの小さな夢だ。
今は、あんまり仕事をせず、知らない町をふらふら旅したい。
先日、東海道新幹線に乗っていて、窓の外を見たら、浜松駅を通過し、浜名湖くらいまでのあいだに、ものすごい数のソーラー発電があった。ソーラー畑のようだ。いつの間に。
三重に住んでいたころ、浜松には二、三回行っているのだが、いずれも小学生のときだ。移動手段はバスか車だ。
そのせいか、ずっと浜松駅で降りたことがあるとおもいこんでいた。もし降りていたとしたら、青春18きっぷで途中下車しながら、旅をしていたときだろう。駅を出て、うなぎを食べたような気がする。電車に乗っていて「うなぎを食べたい」とおもっただけなのかもしれない。
どっちの記憶が正しいのか。
そのことを確かめるために浜松に行きたいのだが、仕事が終わらない。