2019/10/11

同じメニュー

 水曜日、神保町、小諸そばのち神田伯剌西爾。からだが快復したら、小諸そばの秋メニューのうどんを食べようとおもっていた(ふだんはから揚げうどん)。
 昔から同じ店で同じメニューばかり頼んでしまう傾向がある。同じものばかり食べても飽きない。

 内田百閒は毎日同じ店の蕎麦を食べていた。

《蕎麦屋は近所の中村屋で、別にうまいも、まづいもない、ただ普通の盛りである。続けて食つてゐる内に、段段味がきまり、盛りを盛る釜前の手もきまつてゐる為に、箸に縺れる事もなく、日がたつに従つて、益うまくなる様であつた。うまいから、うまいのではなく、うまい、まづいは別として、うまいのである》(「菊世界」/『無絃琴』旺文社文庫)

 百閒の随筆の中でも有名なものなので読んだ人もいるかもしれない。題の「菊世界」は昔の煙草の銘柄。子どものころから吸っていた煙草の変遷を回想し、「今の常用は朝日である」と綴る。

《どうして朝日にきめたかと云ふ特別な理由もなささうである。ただきめた以上は、時時変つては困るのである》