2019/10/01

井戸の絵

 東京メトロの東西線で高円寺に帰るとき、中野駅止まりの電車だったら、中野から高円寺に歩いて帰る。線路沿いではなく、住宅街をあみだくじ方式で通り抜ける。桃園川の遊歩道もよく歩く。午後六時前なのに空は暗い。

 日曜日、西部古書会館。井伏鱒二の九十歳の誕生日を記念して作った絵本『トートーという犬』(白根美代子絵、牧羊社)などを買う。収録作の「すいしょうの こと」の絵にたいし、井伏鱒二が「この井戸の石組はちがうわ」といって、描き直すことになったという逸話がある。
 井伏鱒二は「井戸も城壁の石組みも、基本は同じなんだ」と白根美代子に説明した(川島勝著『井伏鱒二 サヨナラダケガ人生』文春文庫より)。
 なぜかこのやりとりが記憶に残っていて、「すいしょうの こと」の井戸の絵を見たいとおもっていたのだ。
 先日、岡山の矢掛や総社の旧山陽道を歩いているときに、石組の壁をいろいろ見た。いわゆるレンガのような均等な積み方ではなく、大小さまざまな形の石を複雑に組み合わせている。この話を知らなかったら、気づかずに通りすぎていたかもしれない。

 帯状疱疹の症状もおさまってきた。まだすこし脇腹付近に神経痛が残っているが、かなり楽になった。とはいえ、確実に肉体は衰えてきている。
 電子レンジが神経痛に反応するというのも発見だった。レンジのあたためボタンを押した途端、脇腹あたりがピリピリ痺れた。ちょっと気持いい。