先週金曜日の夜から台風十九号の情報を追いかける。ここ数日、寒暖の差が激しく、睡眠時間がズレ続ける。寝起きから数時間、頭がぼーっとしている。
テレビを見ながら開高健の『白いページ』(全三巻、角川文庫)を再読する。
《毎日、毎日、寝てみたり、起きてみたり、書いてみたり、ちょっと飲んでみたり、ちょっと破いてみたり、また寝てみたり、また起きてみたり》(「励む」/『白いページⅡ』)
昔からこういう書き出しが好きだ。
このエッセイにある人物の名前が出てきた。ある日、開高健が銀座のバーに行くと、吉行淳之介、安岡章太郎、遠藤周作がいた。
《それにまじって古山高麗雄氏がすみっこにすわっていた。古山氏と私は初対面だけれど、かねがねその『プレオー8の夜明け』に感心していたところなので、さっそくその話をはじめた》
酔っぱらった開高健は古山氏に着ていたセーターや帽子を進呈してしまう。
ちなみに講談社文庫版の『プレオー8の夜明け』の解説を開高健が書いている。この夜の出会いが、解説を書くきっかけになったのかもしれない。
《いつか、古山さんと酒場ではじめて出会ったとき、かねてから感心していたものですから、非礼と知りつつそのことをむきだしに述べたところ、たまたまよこにいた吉行淳之介さんが、ちょっと考えてから、
「歳月のせいだね」
といったことがあります》
《この空前の大量消費時代に“文学”を守りぬくには怠惰か病気ぐらいしかない》
いずれも『プレオー8の夜明け』の開高健の解説の言葉だ。ちょっと勇気づけられる。