ようやく緊急事態宣言が解除。今年の冬あたりが峠かそれともこのまま収束するのか。
高円寺に暮らして三十二年。コロナ禍以降、近所の散歩時間が増えた。昼と夕方と夜——三回くらい歩く。今の時期、夜の散歩は涼しくて気持いい。
東京メトロ丸ノ内線の東高円寺や新高円寺方面にも頻繁に行くようになった。
金曜日、東高円寺に用事があり、環七沿いを歩いていて、デイリーヤマザキのすこし先の歩道橋の手前にある都営バスの新宿駅西口行きのバス停を通りかかる。高円寺駅入口のバス停は野方や王子方面には何度か乗っているが反対方面は未乗車だった。バス停の場所も知らなかったくらいだ(北に向かうバス停と南に向かうバス停がけっこう離れている)。
バス停で時刻表を見ていたら、ちょうど新宿駅西口行きのバスが来た。風は強かったが雨は止んでいたし、東高円寺駅までは歩いて二十分くらいなのだが、つい乗ってしまう(バスだと七分)。バスに乗り慣れていないのですこし緊張する。
途中、高円寺陸橋のバス停で運転手が交替した。
この都営バスは王子駅から新宿駅まで回る。高円寺駅入口のバス停は駅からはすこし離れているのだが(環七沿い)、新宿駅西口に向かう途中、東高円寺駅、新中野駅、中野坂上駅を通る。
片道バス+徒歩の半バス散歩も面白い。
帰り道は徒歩。東高円寺の細い路地の商店街を通る。北海道の居酒屋のワンコイン弁当をテイクアウトし、オオゼキで半額シールの付いた牛肉などを買う。
東京メトロ丸の内線の新高円寺駅近辺にはブックオフがあるのだが、かつては南口のルック商店街だけで大石書店、西村屋書店、アニマル洋子、勝文堂書店、ほかにも漫画と文庫本が中心の古本屋などがあり、青梅街道沿いにも何軒か古本屋があった。高円寺の南口で一番通っていたのは飛鳥書店かもしれない。飛鳥書店の均一台は文庫五冊で百円だった。
一九八九年の秋に高円寺に引っ越してきたころ、どの商店街にも新刊書店があり、個人経営のレンタルビデオ店があった。
二十代のころをふりかえると、その日一日、文庫本を一冊読んだ、レコードを一枚聴いた、知らない映画を一本観た——そういうことが活力になっていた。単なる錯覚だったにせよ、いろいろな文化を吸収することで、ちょっとはマシな人間になれるのではないかとおもっていた。昨日より今日のほうが、文庫一冊分、レコード一枚分、映画一本分、人生のレベルが上がったと……。
今は毎日歩くことがその日その日の充足につながっている気がする。家事もそうかな。自炊をはじめたころ、野菜の皮むきのが苦手だった。ある時期からピーラーを使うようになったら簡単にむけた。そのうち皮むきが苦でなくなり、何年かして再び包丁でやってみたら難なくできるようになっていた。
仕方なくやっていることでもいつの間にか何らかの技術が身につく。すぐに実感することはむずかしいが、経験値というものはバカにできない。