季節の変わり目になると寝る時間がズレる。したがって起きる時間もズレる。だいたい五、六時間ずつ後ろにズレる。今日は朝七時起。まだ頭がぼーっとしている。
河盛好蔵著『人間讀本』(番町書房、一九六六年)——本の間に日本経済新聞(一九八七年一月二十四日)の河盛好蔵のインタビュー記事の切り抜きあり。
《八十四歳にして意気軒高》
《息長い仕事のコツを聞くと、「仕事をしすぎないこと、人生を楽しむこと」と》
前回『人間讀本』の「永代萬年暦」を紹介したが、「白系ロシア人」というエッセイも入っている。
河盛好蔵がフランスに遊学中(一九二八年ごろ)、革命を逃れてパリにやってきたロシア人の音楽家や芸人、貴族や金持がたくさんいた。
フランスの小市民にもロシア国債を持っている人がいて、彼らは帝政の復活を望んでいた。
《当時は日本にも帝政時代のルーブル紙幣が二足三文で売られていたことを記憶してられる方も多いであろう》
河盛好蔵はパリにいたころ、古本屋の隣のロシア人たちが集まるカフェに一日一度は通っていた。
いよいよ日本に帰国することになって店に挨拶に行く。シベリア鉄道で帰ると報告すると、ロシア人の客に「半年ぐらいではとても帰れないだろう」といわれる。「冗談言うな。二週間で日本に帰れるよ」と河盛好蔵がいうと、みんな大笑いした。
《パリに亡命していた白系ロシア人たちは、祖国の再建を信じようとはせず、もしくは信じること好まないで、今に、また新しい革命が起こって、自分たちの天下が来るにちがいないと、はかない希望をもちつづけていたのである》
初出は『風報』一九五八年七月——。