2022/06/07

乗り継ぎ旅 その一

  週末、三重と京都へ。行きは小田急で新宿から小田原まで行き、小田原からこだまで浜松、在来線で浜松から豊橋、名鉄で豊橋から東岡崎というルート。岡崎宿を散策して名鉄の岡崎公園駅から名古屋へ。名古屋から近鉄で鈴鹿に帰った。

 小田急だと新宿駅から小田原駅まで九百円。小田原から浜松の新幹線の切符は金券ショップで五千二〜三百円くらい。浜松と豊橋は在来線の本数も多く、三十分くらいで着く。六百八十円。この区間は在来線のほうが海が近くて楽しい。弁天島、素晴らしい。

 名鉄で豊橋から名鉄名古屋駅は千百四十円(わたしは東岡崎で途中下車したが)。
 新幹線より二千円ちょっと安い。乗り換えのたびに駅の外に出て軽く散歩したり、コーヒーを飲んだりもできる。

 東岡崎は、はじめて来た……つもりだったが、なんとなく商店街に見覚えがある。いろいろ街道関係の本を読んだせいかなとおもったが、歩いているうちにやっぱり来たことがあると……。予備校時代に一度何の予備知識もなく行った。完全に忘れていた。

 岡崎宿は東海道の宿場町で「岡崎二十七曲り」が有名である。冠木門から岡崎城までの道が曲りくねっている。旅籠は百軒以上あったが、戦災で残っていない。
 このあたりから足助街道(塩街道)ともつながっている(東岡崎から足助行きのバスあり)。岡崎から足助までは二十七キロ。頑張れば一日で歩けそうだが、途中、バスを利用したほうが無難か。

 色川武大が時々岡崎のビジネスホテルで仕事(逃避)をしていた話を書いている。名古屋でも豊橋でもなく、岡崎というのが気になっていた。JRの岡崎駅、名鉄の東岡崎駅ではなく、岡崎公園駅の板屋町のあたりの気がするが、わからない。名鉄の岡崎公園の旧東海道沿いに小さな旅館やホテルがいくつかあった。

《愛知県岡崎市の片隅に、これは完全な商人宿ふうだが、好きな宿がある。一泊朝食付三千円。古びた色町と寺町がまざりあったようなところにあって、ここの二階の六畳で炬燵に入って仕事したり酒を呑んだりしている》(「私の日本三景」/『いずれ我が身も』中公文庫)

 名鉄といえば、色川武大は豊橋にも行っている。

《豊橋競輪場の中の売店で、この地の名産の小ぶりの竹輪に醤油をかけて飯を喰った。あれはオツな昼飯になった》(「駄喰い三昧」/阿佐田哲也著『三博四食五眠』幻戯書房)

「駄喰い三昧」と題した随筆は、色川武大著『喰いたい放題』(集英社文庫)にも入っているが、『三博四食五眠』の収録作とは別である(さっき気づいた)。

 名鉄の沿線は知らない町ばかり。三重に帰る途中、どこかしらの駅で降りたい。岡崎は一度宿に泊ってみたい。