2017/08/19

道徳

《近ごろ道徳教育の復活などといわれていますが、戦前には道徳教育があったと考えるような安手な回顧趣味からは、何も生まれる筈はありません。
 わが国に道徳教育が存在したのは、漢学塾や寺子屋のあった時代までで、明治五年の学制公布は、それを滅ぼす第一歩だったのです》(「虚像と実像」/中村光夫著『文學の囘歸』筑摩書房、一九五九年刊)

 久しぶり中村光夫の本を再読していたらこんな文章があった。他の本でも、子どものころ、修身の授業をくだらないとおもっていた……みたいなことを書いていた。
 昔はよかった話を読むたび、多少は疑うように気をつけている(たまに忘れる)。中村光夫にいわせると、明治期の教育は「知的技能者の大量生産」が目的で道徳の要素は稀薄だったらしい。