2017/08/05

語り口

 部屋の掃除中、田辺聖子著『死なないで』(文春文庫)を探すも見つからず、インターネットの古本屋で注文する。八〇年代前半のエッセイなのだが、男女の平等意識が新しい。「原発についてのソボクな疑問」や「カンボジアに何が起こったか」も内容がまったく古びていない。今読んでもすごい。

《もし大事故がおこったとしたらどうなるのであろうか、日本は地震の多い国なのに、地震が原子炉を襲ったらそのときは》

 反対意見だけでなく、おかしいとおもうことにたいし「ソボクの疑問」を表明していくこと。田辺聖子の「語り口」は、学ぶところが多い。はじめからケンカ腰では、反対あるいは中立の立場の人には言葉が届かない。疑問を提示しつつ、考えさせる——そういう「語り口」を会得したい。