2017/08/06

二ノ橋 柳亭

 神吉拓郎著『二ノ橋 柳亭』(光文社文庫)の見本が届いた。帯に「解説:色川武大/荻原魚雷」。ライターになってよかった。三十歳くらいのころの自分に「いつか神吉拓郎の文庫に解説を書く日がくる」と教えてあげたい。たぶん、信じないとおもう。直木賞候補になった『ブラックバス』の改題作ですね。八月八日刊行。

 ほんの数年前まで、神吉拓郎の作品は新刊書店で買えなかった。昨年秋に刊行された大竹聡編『神吉拓郎傑作選』(国書刊行会)の効果は大きい。わたしは二十代のころから一九二〇年代の生まれの作家を軸に本を読んできたのだが、神吉拓郎の文章は、際立ってうまいとおもっている。大好きな短篇作家だ。
 色川武大の解説「室内楽的文学」は、人物スケッチの最高峰といってもいい。神吉拓郎や色川武大は「都会の大人」というかんじがする。ふたりとも、遊び人として人生をまっとうした人でもある。