世田谷ピンポンズさんの新譜『喫茶品品(きっさぴんぽん)』が届く。一曲目の「すみちゃん」から引き込まれる。「カーニヴァルの晩」のバンドサウンドもかっこいい。サビが頭に残る。今回のアルバムは作り込んでいるらしいという話はちらほら耳に入っていたのだが、予想以上だった。これまでとちがうことをする。変化に挑んでいる。音だけでなく、本人の転機になるアルバムなのかもしれない。「フォーク」というスタイルからも自由になっている。
ここからはアルバムの感想とはすこしズレてしまうが、ここ一、二年、世田谷さんは音楽の変化だけでなく、いい意味で変になってきている気がする。年中旅して歌っていれば、どこかしらおかしな人間になる。おかしくならなければおかしい。
就職せず、三十代を迎える。心のどこかで「まだ引き返せる」とおもっている。ある時期「もう無理」と開き直る、もしくは諦める。二年前の『僕は持て余した大きなそれを、』は、その過渡期に作った曲というかんじがした(それはそれでいいのですよ、もちろん)。
これまでも「バンド向きの曲だな」という歌はけっこうあったけど、ようやく『喫茶品品』で形として聴くことができて嬉しい。