2018/09/29

安心して歩ける道

 先週と今週、神保町古書モールで百円から五百円くらいの街道に関する本、郷土文学の本を買いまくる。「道」関係なら何でもあり状態になっている。

 昨日は高円寺の西部古書会館に徹夜で原稿を書いたあと(といっても、朝寝昼起が基本なのだが)、初日の午前中から参戦した。
 目の前に読みたい本があふれている。カゴを持って本を買うことが増えた。
 すこし前の自分なら手にとらなかったような本が、めちゃくちゃおもしろい。大判の本が増え、仕事部屋が大変だ。しかし今は足を止める時期ではない。

 佐藤清著『道との出会い [道を歩き、道を考える]』(山海堂、一九九一年)はいい本だった。著者は一九三五年生まれ。長年建設省に勤めていた人だが、冒頭から「歩く楽しさと歩ける道づくり」を唱えている。

《最近、せっかく長距離の徒歩旅行をするのなら、歴史的な旧街道の一部または全部を歩いてみたいという人も増えてきているようだ。(中略)ただここで気になることは、急激に発達してきた自動車交通の波に押されて、旧街道の大部分は近代的ハイウェイに生れ変り、連続して安全に、そして快適に歩ける道が少なくなってしまったということである》

《国道や県道に併設されている歩道と、裏道(市町村道)や峠道として残っている旧街道をうまく結びつけて、連続した形での旧街道を再現させることは可能であるように思える》

 イギリスやドイツでは長距離の歩道が網の目のように整備されている。安心して歩ける道がある。日本にもいい歩道はたくさんある。ただ、それが寸断されている。そこが問題なのだ。

《「歴史の道」を保存して後世に残し、さらには国民の健康の増進のために自然に触れながら、快適に長距離を歩くことのできる道を整備することが、今後の「道づくり」の一つの課題であろう》

「歩く楽しさと歩ける道づくり」という文章の初出は一九八五年五月。この時期、安心して歩ける歩道の整備にとりかかっていれば……。