2020/05/26

古本屋のある町

 サンカクヤマで河田拓也さんと待ち合わせ。喫茶店で色川武大関係の貴重な資料を見せてもらう。

 この日『季刊銀花』一九九三年夏号「『當世日和下駄』で歩く東京の道」を買う。出久根達郎さんが「ムダを愛する町——高円寺」というエッセイを書いている。

《一九九三年現在、古本屋の数は二千七百軒ある。うち東京には七百八十軒。いわゆる古本街と称される神田神保町に百四十。早稲田に四十。本郷に三十店。いずれも概算である。ところが杉並区高円寺には、一ヶ所にまとまってはいないが、実に二十四店もの数が営業しているのである。更に貸本屋が四軒あり、新刊書店が十五軒ある。(中略)高円寺という町の特色をあげるなら、まず本屋が多いということであろう》

 二十七年前の話だ。今はずいぶん減った(それでも残っているほうだが)。
 同エッセイには飛鳥書房の竹岡昭さん、大石書店の大石功さん、球陽書房本店の西平守次さん、都丸書店の外丸茂雄さん、球陽書房分店の西平守良さん、青木書店の青木卓雄さん、大竹文庫(貸本屋)の大竹正春さん、そして芳雅堂書店の出久根さん自身の写真が載っている。

 大石書店は昭和六年、都丸書店は昭和七年に開業。高円寺の銭湯の小杉湯が昭和八年である。
 わたしが高円寺に移り住んだのは一九八九年の秋だが、都丸書店と飛鳥書房と竹岡書店によく通った(均一本ばかり買っていた)。出久根さんが書いているころの高円寺には漫画専門の古本屋も二軒あった。
 一日おきに北口と南口の古本屋を回っていた。
 当時、中古レコード屋レンタルビデオ屋古道具屋リサイクルショップなどでも古本を売っていた。それらを合せると九〇年代前半の高円寺には「古本が買える店」が三十軒くらいあった。
 さらに西部古書会館もある。

 部屋の掃除をしていたら山本夏彦著『やぶから棒』(新潮文庫)が出てきた。「古本屋のない町多し」というコラムがある。

《古本屋のない町は戦前はなかった。どんな田舎町にも一軒はあった。旅してその町の古本屋をさがすともなくさがしあて、棚を見るのは旅の楽しみの一つだった》