2021/08/24

一病息災

 十代から二十代にかけて、わたしは虚弱体質で年がら年中風邪をひいていた。そのおかげで風邪のひきはじめの二、二歩手前の症状を察知できるようになった。
 たとえば、肩凝り、背中のだるさ、足の冷え、酒(サントリーの角)、お茶、珈琲の味など、すこしでも異変を感じたら葛根湯を飲む。二日おきに納豆を食い、食べなかった日は整腸剤を飲む。微熱(三十六度後半)があるときはビタミン剤(気休め)を飲む。

 とくに毎日飲んでいる(自分で作る)お茶、珈琲の味覚の変化は体調のバロメーターになる。いちおう「個人の意見です」と断っておく。

 今のわたしは健康なのかというとそうではない。疲れるとすぐ体調を崩す。だからなるべく疲れないよう、休み休み生活しているにすぎない。一般の五十代の日本人の平均より体力がないだろう。

 新型コロナの前から部屋の換気の必要を唱えているが(『日常学事始』本の雑誌社)、これも若いころに風邪をひきまくったことで学んだ。
 換気をしないと部屋の空気が澱み、ウイルスだけでなく、カビも繁殖しやすくなる。

 あと中年以降の健康状態の大きな変化は貼るカイロのおかげかもしれない。冷え性がかなり改善された(これも個人差があるとおもう)。

《一病息災という言葉があるね。あれも、一種のバランス志向の言葉なんだろうね。まるっきり健康な人よりも、ひとつ病気を持っている人の方が、身体を大事にするので、かえって長生きする、というわけだ》(「一病息災——の章」/色川武大著『うらおもて人生録』新潮文庫)

 色川武大は健康だけでなく、生き方にも、どこか不便かつ生きにくい部分を守り育てたほうがいいと説く。完全無欠な生活を目指せば、それはそれで心身に負担がかかる。

 みなさんお大事に。