2022/01/14

ジャーナリストの倫理規範

 アンディ・ルーニー著『下着は嘘をつかない』(北澤和彦訳、晶文社、一九九〇年)の「ジャーナリストの倫理規範」には取材記者への重要な提言がいくつか記されている。

《*親切な言葉もふくめて、記事に影響を与える意図で差し出された供与は固辞する》

《*いかなるものでも、主義を援助したり信奉する目的で職業的知識を利用しない。また、その主義がいかに価値あるものに思えても、主義を利するために記事を改竄しない》

《*昼食のときは飲まない》

「親切な言葉」も記事に影響を与える。人間、褒められたら嬉しいし、貶されると腹が立つ。ある文章が(一部の人に)褒められる。その結果、そういうものばかり書くようになる。そしておかしくなる。
 何かに賛成したり反対したりする。そのときつい自分が所属する陣営に利するようなデータを集めてしまう。そういうデータは探せばいくらでも出てくるし、なければ作ることも可能である。
 だからこそジャーナリストは特定の主義に加担せず、世の中を見る訓練が必要となるわけだが、こうした「倫理規範」に基づく姿勢でものを書くと、左右両陣営からどっちつかずの態度を責められることがある。

『下着は嘘をつかない』の「ある上院議員の決断」にはこんな一節もある。

《政治家すべてがいかさま師とはいわないが、なかにはいかさま師もいる。大衆はそれがだれかを知る権利をもっている。(中略)みんなおなじ人間で、政治家にもジャーナリストにも、良い人間と悪い人間はだいたいおなじようにいる。どちらにも監視の眼を怠ってはならない》