熟読というよりは、行きつ戻りつ脱線しつつ、頭の中を整理しているかんじになってきた。でも今回の読書の目的はたったひとつだ。「自分の操縦法」が知りたいのだ。
『禅ゴルフ』には、その重要なヒントが書かれている予感がする。
わたしはゴルフ未経験者である。しかしペアレント博士の言葉にしたがえば、ヘタな先入観はないほうがよいのかもしれない。別にわたしはホールインワンを狙っているわけではない。一打一打ていねいに最後まで自分なりの最善のプレーを心がけたい。
昨晩からひたすらひとつの単語のことを考えていた。
ペアレント博士は、よいショットを打つためには、明確な「イメージ」を持つことが大切だと述べている。
さらっと読み流しそうになったのだが、「ここはすごく大事だ」とふみとどまる。「イメージ」という単語から何をイメージするか。
英和辞書をひくと「姿、形、象徴、化身、典型、印象、表象、観念、概念、心象、比喩的表現」といった意味が並んでいる。
わたしはイメージトレーニングの「イメージ」くらいに受け取った。
では、ペアレント博士が「イメージ」という言葉をつかっている文章をいくつか抜き書きしてみる。
《だが、もしスウィングする目的が、ボールがターゲットに向かって空中に飛ぶ、あるいはグリーン上を転がるイメージを実現することになれば、心はそうしたイメージで満たされるから、体が自然に回って自由なスウィングができることになる》
《つまり、ボールの止まる地点と、そこに行き着くまでのボールの飛び方や転がり具合を、できるだけ具体的にイメージすることである。そうするためには、あらゆる状況を迅速かつ正しく判断して戦略を立て、それをイメージに変えることが必要になる》
《だが、あえて私が“イメージ”という言葉を使うのは、イメージはもちろん視覚に関連のある言葉だが、触覚と音を含むと思うからである》
《心の中の肉体的機能を司る部分は、イメージで動く》
《意図したことのイメージを心にはっきり描けば、体は自然にそれを実現しようとする。そのイメージこそ、“ターゲット”なのである。イメージが鮮やかであればあるほど、体はそれをより効果的に体現する》
《だから、最高のスウィングを生むヒントは、観念的な思考ではなくて、できるだけ具体的なイメージなのである》
ここまでは、序の口。
ペアレント博士のいう「イメージ」はおそろしく多彩で緻密で深い。わたしは「触覚と音を含む」でまいった。たった一語にもかかわらず、ペアレント博士の説く「イメージ」を身につけるには、どのくらいの時間と鍛練が必要なのか、まだイメージできない。
しかし「これが鍵だ」という確信はある。
今の自分の停滞感や閉塞感は「イメージ」が弱まっているからではないか。
だんだんそんな気がしてきた。
(……続く)