2012/10/27

さてこれから

「知る」と「わかる」、「わかる」と「できる」、「できる」と「ごく自然にできる」のあいだには、いろいろな段階がある。「知る」だけでも「ちょっと知っている」と「ものすごく知っている」というちがいもある。
 ほとんど知らないのに「できる」こともあれば、ものすごく熟知しているのに「できない」ことがある。

 気がついたらできるようになっていた。なぜできるようになったのかよくわからない。
 世の中にはそういう感覚で生きている人もいる。彼らがまったく努力していないとはいわない(努力を努力とおもっていない可能性はあるかもしれないが)。

 将棋のプロ棋士やアマチュアの高段者になると、頭の中に将棋盤があって、いわゆる「目隠し将棋」ができるようになる。
 初心者からすれば、神技のようにおもえるかもしれないが、おそらく「目隠し将棋」のものすごい特訓をしたのではなく、毎日好きで将棋を指しているうちに、できるようになっていたのだとおもう。

 そうした能力の習得は、たいてい大人よりも子どものほうが早い。
 スポーツの場合だと、理屈よりもからだが反応し、それを反復することで体得する……と言葉で説明しようとすると、どうしても理屈っぽくなる。

 あることを初心者に教えるとき、たくさんの言葉をつかって説明するよりも、お手本を見せて、それをじっくり観察させて、理屈ぬきにやらせてみたほうが、早くおぼえるという説がある(W・ティモシー・ガルウェイのインナーゲーム理論)。

 ああしろ、こうしろと細かく指示されると、ぎこちなくなったり、苛々したりして、うまくいかないことが多い。見て学びたいとおもうような人にならないかぎり、どんなに言葉をつくして教えても、あまり効果はないのかもしれない。

 というわけで、『禅ゴルフ』(ちくま文庫)に続いて、「ヨガテニス」の異名をもつガルウェイの本を読んでいくことにする。今のところ、着地点はまったく見えてない。