2014/02/23

木山スタイル

 三月まであと一週間。
 慣らし運転のつもりで徐々に散歩の距離をのばす。高円寺中野間を往復する。電車で一駅分だが、中野ブロードウェイの四階まで階段をのぼったら、足にきた。

 紀伊國屋書店の『scripta』の連載「中年の本棚」も一年。季刊の連載は楽しい。でも「中年」のあり方に関してはまだ迷っている。

 二十代、三十代のころは「現状維持ではいけない」とおもっていたのだが、四十代以降は「のらりくらりでいこう」という気持になっている。

 ここ数年、下り坂仕様のライフスタイル——どうにか細々とのんびりと暮らしていけないものかと考えている。
 四十代は働き盛りだといっても、体力も気力も衰えてきている。伸び盛りの時期はすぎたとおもう。そのことを悲観するのではなく、別の価値を見いだす。たとえば、行動範囲は狭くなった分、小さな場所(近所)を大切にするとか、部屋でくつろぐ時間を充実させるとか、自炊のレパートリーを増やすとか。

 すこし前に、山口瞳著『小説・吉野秀雄先生』(文春文庫)を読んで、やはり、この本の白眉は「木山捷平さん」であるという結論に達した。

《木山さんは、文士は講演なんかするもんじゃないと言われた》

《また、小説が書けなくなったら、汚い服装で旅行して、三流旅館に泊まればよいと言われたこともあった。とくに靴はボロボロのものがよい》

 たぶん、この方向で間違いない。ただ、行けるかどうかはわからない。