東京ローカル・ホンクの木下弦二さんのソロアルバム『natural fool』(MR-026 マインズレコード)が発売。小冊子「natural fool読本」(谷川俊太郎、覚和歌子、星野博美、荻原魚雷、川村恭子)にエッセイを書いた。
先日、吉祥寺スターパインズカフェでアルバム発売記念ライブに行ってきた。
いいライブを観たり、いい音楽を聴いたりしたあとは、もうそれだけいいとおもってしまう。
「ブラック里帰り」「昼休み」「夜明け前」——弦二さんの歩みが刻まれているかのようにおもえる曲だけでなく、今回のアルバムでは「夜道」が聴いているうちに好きになった。
やさぐれた気分で夜道をうつむきがちに歩く。それでも「この道を歩くだけ」。東京ローカル・ホンクは「歩く歌」が多い。MCでも歩いているときに曲ができるとよく話している。弦二さんの作る「歩く歌」は、疲れていたり迷っていたりしても、とにかく前に進もうとする。「夜道」もそう。でも「夜道」のよれよれ歩くかんじは中年にならないと作れない。元気を出しなよという励ましもあれば、別にいつも元気でなくてもいいよという慰めもある。『natural fool』はそのバランスが絶妙だなと酔っぱらって歩いた吉祥寺の夜道でそうおもった。