2020/08/21

願いごと

 水曜日神保町。東京堂書店の週間ベストセラー、二週連続で『中年の本棚』(紀伊國屋書店)が一位。ちなみに二週連続二位は村上春樹の『一人称単数』(文藝春秋)である。東京堂で本を買う人はヤクルトファンのひとりっ子が書いた五文字タイトルの本が好きな人が多いようだ。

 毎年行きつけのバーの七夕の短冊に願いごとを書いている。いつも「本が売れますように」と書いていたのだが、今年は「増刷」の二文字にした。目標は明確にしたほうがいいとおもったのだ。

 木曜日新宿。駅の東口から西口の旧青梅街道のトンネルを通る。トンネル内に青梅街道の宿場町が描かれている。街道のことを知るまでは青梅街道は青梅までだとおもっていたが、山梨県の酒折まで続いている。酒折で甲州街道と合流する。新宿西口のよく利用していた金券ショップが閉店していた。紀伊国屋書店の新宿店に行く。時々レジのモニターに『中年の本棚』のカバー(装丁・鈴木千佳子さん。カバーをとった表紙もすごく気にいっている)が映る。紀伊國屋書店の地下の水山であなご天梅とろろうどん。期間限定メニューなのかもしれないが、一年中食べたい。

 そのあと都営地下鉄で神保町に行き、久しぶりに本の雑誌社へ。街道歩きを再開することを伝える。

『中年の本棚』で「もう若くないとおもうからこそ、今のうちにできることをやっておきたいという気になる。ところが、手を広げすぎると収拾がつかなくなる」(色川武大、「心臓破り」の五十路)と書いた。古本にしても街道にしても興味がどんどん拡散している。読めば読むほど読みたい本が増え、歩けば歩くほど歩きたい道が増えてくる。

 五十代は何をしないかを考える時期なのかもしれない。