日曜日、昼、阿佐ケ谷に行く。風が冷たい。歩いていくつもりだったが、電車に乗ってしまう。
よるのひるねの一箱古本市をのぞくと、南口のふるほん屋の助教授(あだ名)が店番をしていた。川崎ゆきおの『レトロ帝国の逆襲』(河出書房新社)、『東郷健の突撃対談 著名人15人がふと洩らしたホントのこと』(雑民の会出版部)などを買う。いい買い物ができた。
帰り際、レジのちかくの箱にさそうあきらの『マエストロ』(双葉社)の二巻がある。出てたんだ。知らなかった。一巻が二〇〇四年の八月だから、二年半ぶりの続刊である。助教授の出品。おまけしてもらう。
そのあと阿佐ケ谷北口の古本屋をまわり、南口一番街の風船舎に寄ると、ちょうど読みたいとおもっていた松山俊太郎の『インドを語る』(白順社)があった。
神田美学校の講義をあらためて構成した本なのだが、あまりの話の広さと深さに読んでいると知恵熱が出そうになる。
「不可説」という数は、〈一〇の三十七乗〉桁とあらわすことができるのだが、人類がはじまって以来の本の活字の数よりもはるかに多い桁なのだそうだ。わけがわからない。
いい店だ、風船舎。阿佐ケ谷散策の楽しみがふえた。
帰りはガード下を通って歩いて帰る。
家に帰って、夕飯を食い、ごろごろしていると、阿佐ケ谷在住のミュージシャンのオグラさんから飲もうよという電話がかかってくる。
「あれ、今年飲むのはじめてだっけ。じゃあ新年会だ」
高円寺庚申通りの鳥舎に行くと、一階が満席で二階席(ゲームルームみたいになっている)に案内され、とりあえず、高円寺在住の友だちを呼んで、結局、閉店まで飲みつづけることになった。
オグラさん「あと地球は五十億年しかもたないんだよ。だから好きなことして生きるしかないよ」といいだす。
「今の宇宙は四回目か五回目って話があるの知ってる?」とわたし。
ホントかどうかはわからないが、ビッグバンがあって宇宙が膨張してまた収縮してまた膨張して……。そういうのをくりかえしているという説があるのだ。
「前の宇宙のときも、もしかしたら今と同じようにこうやって酒を飲んでいたかもしれないんだよ」
「じゃあ前の宇宙のときにもホッピーはあったのかよ」
「たぶんあったんじゃないかなあ。忘れたけど」
生まれ故郷も齢も職業もちがうのにいつの間にかいっしょに飲むようになって、酔っ払って他愛もない話をしている。ときどきそういうことを不思議におもう。