2016/11/11

トランプ後の世界

 アメリカ大統領選でドナルド・トランプが当選した。選挙前から、トランプ優勢の予想はけっこう目にした。
 開票がはじまって、トランプ優勢が伝えられる中、ニュース番組のインタビューで(たぶん)金融関係の人が「ほぼほぼヒラリーだとおもいますよ」と答えていた。「そんなこといって大丈夫なのか?」と心配になった。
 トランプの勝利を「番狂わせ」みたいに報じるニュース番組にも違和感をおぼえた。後からいうのは簡単だが、正直、トランプが勝ちそうな雰囲気はあったとおもう。

 イギリスのEU離脱のときもそうだったが、反グローバリズム、反富裕層、反インテリ、反都会といった流れが強まっている。人権に制限を与える意見も活発になっている。いいかわるいかではなく、そうなってしまった。

 大統領選の前、ドナルド・トランプの本を何冊か読んだ。
 ある本の中ではトランプがノーベル文学賞を受賞する前のトルコ人作家のオルハン・パムクの作品を激賞していたエピソードが記されている。トランプはかなりの読書家で社交に長けた教養主義者という一面もある(そうは見えないけど)。
 ペンシルベニア大学大学院ウォートン校でMBAを取得した経歴をふくめ、選挙中は一切そうしたカードを使っていない(ように感じた)。逆に偏見や暴言、傍若無人さばかりが目立った。

 それはさておき、今、英米で起っている流れは、遠からず、というか、すでに日本にも来ている。
 人権、弱者救済、多様性——かつて「よい」とされていた価値観が崩れてきている。その価値観を支えるための犠牲を払いたくないという人が増えている。「きれいごと」を否定する人を批判したとしても反発が強まるだけだ。

 現状、安心と安全は限られた人にしか与えられていない。万人に生活の安定を行き渡らせられるほど、世界は豊かではない。
 わたしも自分のことで目一杯だ。生活が苦しくなれば、寛容さを失う。すくなくとも自分の善意や良心や正義感はアテにならない。
 それでもみんながすこしずつ我慢し、損を引き受けていかないと世の中はよくならないことはわかっている。「自分さえよければいい」という価値観が蔓延すれば、誰にとっても住みづらい社会になるだろう。

 トランプ後のアメリカがどうなるのかはわからない。わたし自身、混乱している。頭の中にひっかかっていることが言葉にならない。

……すこし冷静になったら続きを書く。