《マインドフルネスは欲しいけれど、瞑想や祈りはお断り? それならフライフィッシングをすればいい》
先日、ある原稿を書くための参考資料として読んだアリアナ・ハフィントン著『サード・メトリック しなやかにつかみとる持続可能な成功』(服部真琴訳、CCCメディアハウス、二〇一四年刊)にそんな一節があった。
読む前は「フライフィッシング」という言葉に出くわすとおもわなかった。いちおう断っておくと、『サード・メトリック』は釣りの本ではない。
引用した箇所のあと、次のような文章が続く。
《私の友人のなかには「ランニングが自分にとっての瞑想だ」「スカイダイビングが私のメディテーションだ」「ガーデニングが瞑想の時間だ」と言う人たちもいる。だがランニングシューズを履かず、パラシュートを開かず、シャベルを握らず、釣り糸を垂れずに、目指す心の状態を手に入れることはできないのか。肝心なのは心を今という瞬間に存在させ、落ち着いた状態に保ち、自分自身とつながるためのトレーニング方法を見つけること》
わたしの場合、古本のパラフィンがけ、新聞や雑誌のスクラップの作業が瞑想に近いかもしれない。けっこう無心になれる。
「サード・メトリック」は、お金や権力ではない「第三の価値観」といった意味で、ワークライフバランスのすすめであり、心身の健康を見直そうという提言でもある。
《あまりに多くの人が仕事のために人生を——そして魂も——ないがしろにしている》
《働きすぎが生産性喪失に関係することは、どの国でもどの文化でも同じ》
《適切な睡眠によって改善できないものはないに等しい》
《科学的な根拠こそなかったものの、ヘンリー・デイヴィッド・ソローは歩くことの本当の効果に気づいていた。「脚が動き始めた瞬間、思考も流れ出すように感じる」と彼は書いている》
よく寝てバランスのいい食事をして本を読んで散歩して釣りをしてのんびり暮らしたい。夢です。