午後三時ごろ、「ちょっと根津のほうに行ってきます」とアルバイトを抜けだし、「秋も一箱古本市」に行く。
地下鉄千駄木駅から「アートスペース・ゲント」、「貸はらっぱ音地」、「ライオンズガーデン」、「宗善寺」、「パール・オステリア・コムム」の順で駆け足でまわって、根津駅から仕事場に戻る。ほんとうは午前中に寄ってから、仕事に行くつもりだったのだが、寝坊してしまった。
本はゆっくり見ることができなかったけど、お祭り気分が味わえて満足する。
一箱でなんとなく買った田村隆一の『詩人からの伝言』(メディアファクトリー)がおもいのほかよかった。帰りの電車の中で読んでいたら、止まらなくなった。C・D・ルイスの詩が生まれるときの話について語っているところがあって、詩の「種子」が育ち、詩が生まれる瞬間までには、数日、ときには数年かかることもあると。
《いいかい、このプロセスがない限り、ある一篇の詩がいかに巧妙に正義を歌ったり、愛を讚えても、またモダーンな意匠で書かれても、真の意味でそれは「詩」ではないんだよ》(一篇の詩の誕生)
詩の話なのだが、いろいろ考えさせられる。どうしても仕事の原稿を書いているとスピードが求められる。これが意外と消耗する。仕込みに時間がとれなくなって、ときどき自分のペースを見失う。もっとじっくり文章の「種子」を育てながら書いていきたい。むずかしいことだが。
夜は、大阪から一箱古本市にも参加していた「BOOKONN」の中嶋大介さんと古本酒場コクテイル。先日のまほろばの古本市のときも出店していた。コクテイルのあと、夜中十二時すぎ、高円寺の「ZQ」に寄る。翌日、いっしょに西部古書会館の古書展に行く。
今日の夜は東小金井のザ・チャンプルー海風で東京ローカル・ホンクのワンマンがある。この秋『生きものについて』というニューアルバムが出た。名盤ですよ。