2007/10/28

ブックオカおぼえがき

 飛行機で福岡空港から地下鉄で天神に直行して、丸善、福家書店福岡店、ジュンク堂書店福岡店をまわる。
 気温二十五度。暑い。
 福岡に行く前日に、元リブロの人と飲んでいたのだけど、「博多は日本屈指の書店激戦区だよ」といっていたのは、ほんとうだった。

 今回のブックオカの目玉のひとつである「福岡の書店員65名が選んだ激オシ文庫フェア」を見る。

 いちばんのインパクトはこれでしょう。

〈『適当教典』高田純次(河出文庫)
 もし、高田純次が100人の村があったら……世界征服もやぶさかでない〉

                  丸善福岡ビル店 脊戸真由美

 この本、単行本のときは『人生教典』(河出書房新社)という題だった。わたしはこの本を読んで日当りのいい部屋に引っ越すことに決めた。人生、変わりましたよ、すこし。

 それから荷物を置きに東映ホテルへ。すぐちかくに書肆玄邑堂があった。はじめて入る古本屋は、棚が新鮮。店が細くて奥行きがあって、いいかんじだった。そのあとうどんを食う。

 しばらくホテルでくつろいでいたら、眼鏡の左側のツルのネジが折れる。
 旅先だから予備の眼鏡もない。かなり焦る。でもすぐちかくの地下街に眼鏡屋があり、無料で直してもらった。

 午後六時半からの丸善の南陀楼綾繁さんトーク「リトルマガジン・遊書日記」の前に、西新大古本まつりに行く。
 会場は、西新エルモールプラリバというショッピングセンターの七階催事場なのだが、昔、高田馬場BIGBOXの六階でやっていたときの古本市と雰囲気が似ていた。なつかしくてうれしくなる。
 天神に戻って、丸善の裏のほうの路地にある喫茶店で一息。
 西新の古本まつりでは『天神ストリート』(天神文庫、西日本新聞社)という本を買った。
 この本の中で、夏樹静子「蒸発 ある愛の終わり」、瀬戸内晴美「美は乱調にあり」、渡辺淳一「くれなゐ」、山村美紗「鳥獣の寺」、檀一雄「火宅の人」、椎名誠「モンパの木の下で 都市の貌」といった本の天神界隈の記述の抜粋が掲載されている。

《いま日本の街でもっとも活気があってイキオイがあってセンスがいいのは福岡だ》(椎名誠)

 話はそれたけど、南陀楼綾繁さんトークショーは、『プチブックレシピ リトルプレスの作り方』(毎日コミュニケーションズ)のyojohanさんもゲストで、いろいろ貴重な話を聞くことができた。

 そのあと、中華料理屋で今年のはじめごろ偶然、東京でお会いした福岡の名物(?)書店員のタカクラさんや石風社のFさん、numabooksの内沼晋太郎さん、貸本喫茶ちょうちょぼっこの福島さんたちと打ち上げ。鍋、うまかった。
 だが、場所も名前もおぼえていない。あともう一軒行って、ホテルに帰って熟睡。旅先ではよく眠れる。しかも早起きになる。

 二日目。とりあえず、荷物を天神のコインロッカーにあずけて、地下鉄で赤坂に。「おとなりキップ」というのが百円。福岡、バスも百円でいろいろまわれる。物価も安くて暮らしやすそうだ。あと地下街にもおどろいた。広い。
 駅ちかくの「レンガ」という店でコーヒーを飲む。

 けやき通りの「一箱古本市」。買った、買った、よかった、よかった、楽しかった。
 古本酒場コクテイルの常連で、今年福岡に引っ越したIさん(音羽館で働いていたこともある)とUさんも出品していて、山田稔さんの本など、いい本を並べていた。売り上げもけっこうよかったそうだ。ふたりとも元渋谷ブックファーストの書店員。
 今回いちばんの収穫は、竹中労の『自由への証言』(エフプロ出版、一九七七年)かなあ。はじめて実物を見た。うれしか。「週刊読売連載〈エライ人を斬る〉筆禍裁判の記録・私闘の論理」
 証言は、井家上隆幸、五木寛之、大島渚、今東光、松浦総三、丸山邦男、矢崎泰久。
 筆禍になった原稿は「佐藤寛子・庶民ぶるネコなで声の権勢欲夫人」。佐藤寛子はグラビアアイドルではなく、佐藤栄作の妻ですね。蛇足。

 途中、南陀楼さんのかわりに店番をする。場所は「ブックスキューブリック」(もし将来、町の本屋さんをやりたいとおもっている人は必見かも。福岡県外でも注目のミニ書店)の前。お隣さんは、以前これまた高円寺の古本酒場コクテイルで会ったことのある女の子。箱をみると、田中小実昌の『ぼくのシネマ・グラフィティ』(新潮文庫)がある。これ、持ってなかった。ブックカバー、おまけしてもらう。「古本UMA」と書いてある。
 店番中は、スタンプラリーのハンコ押しが忙しい。子どもがいっぱいくる。あとちょっとしたトラブルも発生。不思議な女性がいきなりわたしの隣に座り、南陀楼さんの本を勝手に片付け、自分の本を並べはじめ、カバンからカッターナイフを出して……。ちょっと怖かった。

 店番のあとは、入江書店、痛快洞、バンドワゴンをまわる。入江書店は、正統派の古本屋。近所にあったら通いたい。入江書店のちかくの「博多さぬきうどん」もうまかった。ここはまた来たい。
 痛快洞は、買わされた。いっぱい買ったら、割引してくれた。あとバンドワゴンは地下にある。迷った。安岡章太郎の『驢馬の学校』(現代史資料会)が買えて満足。ずっと読みたかった本を旅先で買えるとうれしい。
 一箱古本市の打ち上げは「東方遊酒菜ヌワラエリヤ」。店主の方は建築家だそうで、店内の天井まである本棚(高そうな本がいっぱいあった)は壮観だった。
 焼酎を飲んでいるうちに、わけがわからなくなる。
 そのあと中華料理屋(場所、おぼえていない)で、また焼酎。どんどん濃くなる。最後のほうはストレート。そのあと南陀楼さん、福島さん、内沼さんとこの日家に泊めてもらう約束をしていたIさんとUさんともう一軒(※1)行ったのだが、睡魔におそわれ、注文した飲み物がくる前に寝てしまう。一日中歩きどおしだったからなあ。

 そのあとIさんとUさん宅に一泊。
 地下鉄七隈線(この地下鉄、電車好きはいちばん前の車両に乗るべし。運転席のしきりがないから、地下鉄の中がよく見える)で早朝、天神に向い、コインロッカーで荷物をとり、中洲川端まで散歩。天神中央公園でぼーっとする。「新たなポテンシャルをたくわえて中洲ゲイツ、再始動」という看板を見て、わたしも再始動しようと心に誓う。
 まだすこし時間があったので、地下鉄で博多駅に出る。福岡交通センタービルのバスチカ商店街をうろうろ。バスチカ。響きがかっこいい。太郎うどんでかけうどん。この店、ラーメン屋とつながってるのだけど、早朝はうどん屋だけ営業している。

 スカイマークで東京に帰る。早い、飛行機。でも旅情なし。
 来年も行きたい。二泊三日はぜんぜん足りん。今度はラーメンも食おう。あと中洲の屋台も。

 家に帰ると、原稿の催促が……すみません、仕事します。
 というわけで、これから小杉湯につかってきます。今日は漢方薬草の湯。

(追記)
※1 古本喫茶coffinでした。南陀楼綾繁さんのブログにて判明……。