日曜日、ひさしぶりに渋谷に行った。スクランブル交差点が横切れず、人の波に流される。信号変わるの早いよ。あれじゃあ、おとしより、渡りきれないよ。移転したばかりのブックファーストに寄ると、人でいっぱいだった。レジも混んでいた。地下にあるせいか、棚の配置のせいか、方向感覚がおかしくなる。働いている人はちょっとたいへんそうだ。
話はかわるが、昔の高円寺文庫センターの跡地には、来月「スマイルベーカリー」というパン屋ができることになった。本からパン。これはちょっと予想していなかった。
それから今年二月に閉店した高円寺の絵本の古本屋「えほんやるすばんばんするかいしゃ」が八月に再開していた。
二ヶ月くらい気がつかなかった。不覚だ。
すこし前に扉野良人さんから『SAGE(サージュ)』(一九八一年十一月号)という雑誌をもらった。
この号では「全国書店マップ」(高橋雅彦)という連載で「中野・高円寺・荻窪・吉祥寺・国立・八王子」と中央線沿線の新刊書店と古本屋がとりあげられている。
《高円寺はごく庶民的な街である。
新宿や吉祥寺と違って特に大きな書店はない。そのかわり、古書店がたくさんある。どの古書店も、知識欲旺盛な若者で賑わっている。
駅前には小ぎれいな新刊書店が多いが、奥に入っていくとい、気取らない感じの古本屋が多くなる》
地図にはいくつかまちがいだとおもわれる箇所があったが、それにしてもずいぶん変わったなとおもう。
駅前の新刊書店がなくなった。南口の二階建の湘南堂書店もなくなったし、北口の現代書店は今はブックスオオトリ。建物は新しいマンションになっている。
北口庚申通りのダイワ書店と大五郎書店、南口すぐの邦文堂書店は記憶にない。
古本屋でいうと、北口の佐藤書店がなくなった。レジのうしろのガラスケースに芥川賞、直木賞作品が並んでいて、詩の関係の本も充実していた。本の値段は安くはなかったが、ときどきほりだしものがあった。
まったく知らない古本屋もある。北口のエルゴスム書店は聞いたこともなかった。注釈には「初版本ばかり集めた。『本キチ』のための古書店」とある。
エルゴスム書店かあ。コギト・エルゴ・スム。我おもうゆえに我在り。
でも、もう店はない。