2008/08/31

病みあがりで古書市

 秋の花粉症が本格化したのか。それとも風邪なのか。急に気温が下ったし。とにかく頭がまわらない。鼻にテュッシュペーパーをつめ、マスクをしながら仕事をする。去年はどうしていたのか。
 とおもっていたら、熱が出た。三十七度五分。
……とここまで書いたのが、二十五日(月)でそれから火、水、木、金とずっと三十八度半ばくらいの熱が続く。水曜日に病院に行ったのだが、いつも聴診器をあてて、すぐ薬を出してくれるお医者さんが「リンパ腺がはれてますね」といったあと、「血液検査してみますか」ときかれる。心の準備(?)ができてなかったので検査は断り、いつもの薬をもらって、様子をみることにする。

 様子をみていたところ、まったく熱が下らない。

 たまに肩がこりすぎて、首が痛くなることがあるのだが、それも風邪の初期症状のひとつであることがわかった。首から肩にかけてのリンパ腺がはれるから痛いわけだ。
 上京以来、風邪ひいて医者に行くなんて、この一年くらいことで、それまでずっと自力で治してきたのだけど、熱が出て肩がこると低周波治療器をつかっていた。無知ってこわいなあとつくづくおもう。
 水分をとって寝る、汗をかいて起きる。そのくりかえし。一日六、七枚くらいシャツをかえる。部屋干しでも三十分くらいで乾く通気性のいいTシャツを先日帰省したときに買いだめしておいたのだが、こんなにも早く役立つ日がくるとは。
 治りかけのときに、むしょうにお腹が空く。やっとだ。長かった。一週間ちかく風邪が治らなかったのはひさしぶりだ。

 土曜日、ようやく熱がぬける。声はかすれ気味だ。
 午前中、西部古書会館の大均一祭を見て、それから仕事に行く。この日は全品二百円。日曜日は全品百円になる。
 病み上がりだから、まだ本調子ではない。珈琲を飲んだら、気持わるくなる。煙草も吸ってみたが、うまくない(このまま禁煙できるかも)。
 風邪をひくと、酒、珈琲、煙草をのまず、古本屋通いをしなくなる。まったくお金のかからない暮らしだ。そのかわりちっとも楽しくない。

 夕方仕事が終わり、帰りにBIGBOXの古本市に行く。
 東西線の電車の中で「早く帰って寝たほうがいいかなあ」ともおもったが(仕事の資料をふくめ荷物もいろいろあった)、高田馬場で降りてしまう。
 久々のBIGBOXの古本市だけど、あいかわらず、ことごとく、手にとった本が自分の予想よりも安い。あと一階じゃなくて九階、建物の中というのもよかった。なつかしいかんじ。BIGBOXのエレベータに乗ったの、何年ぶりだろう。
 本気で蒐集しているわけではないけど、毎日新聞社の「コア・ブックス」シリーズの未入手本、大宅壮一選集の『文学・文壇』の巻、あと『面白半分』の増刊号など、気がついたら重くて持てないほど買ってしまう。

 さてこれから原稿を書かないといけない。予定通りにいかないなあ。

2008/08/22

積んでは崩し

 どうもやる気がでないので、自転車で阿佐ケ谷に行く。早稲田通りから北口の「ゆたか。書房」「銀星舎」「ネオ書房」「今井書店」「千章堂書店」の順に古本屋めぐり。
 そのあと高円寺にもどって、名曲喫茶ネルケンでコーヒーを飲んで、北口のアンデスで豚肉を買って帰宅する。なんか調子がわるいなあとおもっていたら、雷雨。
 仕事しないとなあとおもいつつ、現実逃避ばかりしている。

 ソフトボールの決勝戦と女子サッカーの三位決定戦を交互に見て、そのあと古本のパラフィンがけと値段付をする。好不調と関係なくできるちょこまかした作業はけっこう好きだ。

 阿佐ケ谷の古本屋で買ったみうらじゅんの『ボク宝』(光文社文庫、一九九九年刊)を読んだ。

《物集め、収集、コレクション、意味合いはどれも同じだが、この世界もどこかの誰かさんがいつの間にか介入してきて「どれだけ持ってるの?」「価値は上がってんの?」「売ったらいくらになるの?」と、ややこしいことになってきた。
 かく言うボクも、バリバリその世界で戦い、出費に苦しみ、“こんなものまで押さえなきゃなんないわけ”と悩んだりもした。それは全て、どこかの誰かさんが作ったルールの下、いつかくる(はずの)他人に向けての自慢を、期待しての戦いであったわけだ》(「ボク宝に指定します!」)

 それで四十歳を前にしてこれまでコレクションをふりかえり「どれがぼくにとってのボク宝なのか?」を検討する。
 結局、自分にとって何が必要なのか。わたしも「どこかの誰かさんが作ったルール」にしばられながら、古本を売ったり買ったりしている。それではいかんとおもうのだが、なかなかそこから逸脱できない。

 仙台への旅行中に『積んでは崩し 南陀楼綾繁のブックレビュー&コラム』(けものみち文庫1)が届いていた。逸脱している。道なき道を邁進しているかんじだ。まさに、けもの道だ。そのけもの道は、すでに南陀楼さんのルールや方法論が確立されている(とおもう)。
 とはいえ、本を紹介するだけでなく、書店に仕入れさせて、売れ残ったら自ら買い取るというルールには唖然……。
 南陀楼さんより若い世代からすると、またそこからの逸脱を考えなくてはいけない。けもの道はけわしい。

2008/08/18

またまた仙台へ

 十五日(金)の夜。仕事のあと、また仙台へ。新幹線一時間四十分。近い。ちょうどこの日、秋花粉の症状が出はじめる。しかし仙台にいるあいだは平気だった。
 火星の庭に行くと、yumbo(ユンボ)というバンドがリハーサルをしていた。
 翌日、ライブを見て、緻密な曲構成とやわらかい雰囲気、メンバーそれぞれの個人技とハーモニーに驚嘆。ほんとうにいいバンドだった。ボーカル、ギター、ベース、ホルン、ピアノ、パーカションという編成なのだけど、曲ごとに楽器がころころ変わる。
 演奏のあいだ、ずっと東京にいる友人たちにも聞かせたいなあとおもっていた。

 十六日(土)は、塩竈市の長井勝一漫画美術館に。ふれあいエスプ塩竈という施設の中にある。
 白土三平、永島慎二の原画や『ガロ』のバックナンバー、稀少本などが展示。『AERA』に掲載された長井勝一インタビューもかざってあった。インタビュアーは中川六平さん。
 この建物のすぐ隣にある、明日香書店という古本屋にも寄る。
 午後八時半、火星の庭の古本の森文学採集のクロージングパーティー。前野さんが用意してくれたウィスキーがうまくて、つい飲みすぎ。しゃべりすぎた……ような気がする。yumboの澁谷さんと中古レコードの話をしたような……気がする。番号買い、年代買い、セッションメンバー買い。まわりがちょっとあきれていた……ような気がする。ほんとうにすみません。
 パーティーの前に、吉祥寺のバサラブックスのSさんが来店。髪をばっさり切っていて、一瞬、誰かわからなかった。すみません。

 今回の仙台では、とにかくずっと飲んでいて、最終日は大寝坊。時計を見たら五時すぎで「朝?」とおもったら夕方だった。火星の庭のクロージングパーティーから帰ってきたのが午前三時くらいで、すぐ寝て、それから十四時間、いちども目がさめなかったのである。
 おかげで、昼すぎに帰るつもりが、東京行最終のやまびこに乗ることに。おかげで、仙台一番町のアップルストアで行われたyumboのライブを見ることができた。

 どうしてこのバンドをこんなにいいとおもってしまったのだろう。音のよさ、演奏のうまさ、だけじゃない。何か別のもの。メンバーひとりひとりの力をはるかにこえたところにある音を表現しようとしている姿勢をかんじたのだとおもう。たぶん、やりたいことの理想が高すぎるバンドなんじゃないかと。まだちょっと考えがまとまらない。

 火星の庭の「文壇高円寺古書部」コーナーの売り上げ冊数は百三十冊!
「三割引セール」を八月二十四日(日)まで延長してもらうことになりました。よろしくおねがいします。

……というわけで、いろいろ告知。

八月三十日(土)、三十一日(日)に高円寺の西部古書会館で「第二回 大均一祭」があります。
++西部古書会館++
杉並区高円寺北2-19-9
http://www.kosho.ne.jp/~tokyo/kaikan_w.htm

『わめぞ月の湯ツアー 2008・秋』がまもなくはじまります。
■Road to 月の湯(1)
第10回 古書往来座外市  会場・古書往来座
奇数月恒例、街かどの古本縁日。古本約3000冊から雑貨、ガラクタまでの敷居の低い古本市! 「わめぞ文庫001」発売開始!
9月6日(土)〜7日(日)

■Road to 月の湯(2)
第23回 早稲田青空古本祭 会場・穴八幡宮境内(主催・早稲田古書店街連合会)
早稲田古本街、年に一度の大バーゲン。6日間で、のべ30万冊出品。わめぞメンバーの古書現世、立石書店が参加します。
10月1日(水)〜6日(月)

第2回わめぞ青空古本祭(予定) 会場・立石書店・外スペース(穴八幡宮すぐ下)
穴八幡宮すぐ下の立石書店での外市。
10月4日(土)、または5日(日)予定

■Road to 月の湯 FINAL
第2回 月の湯古本まつり 会場・月の湯(目白台)
今年4月に大好評だった昭和初期からの銭湯を使っての古本市。カフェコーナーあり。
10月11日(土)
詳細は「わめぞblog」(http://d.hatena.ne.jp/wamezo/)にて。

貸本喫茶ちょうちょぼっこで「古本と男子」というイベントが九月から十一月まで三ヶ月にわたって開催されます。わたしも第2部で古本を出品します。

「古本と男子」
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第1部
2008年9月
6(土)7(日)
12(金)13(土)14(日)
19(金)20(土)21(日)

●M堂(松岡 高)1946年生まれ
●本の森(高橋 輝次) 1946年生まれ
●街の草(加納 成治)1949年生まれ
●古本オコリオヤジ(林 哲夫)1955年生まれ
●にとべ文庫(にとべさん)1963年生まれ
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第2部
2008年10月
4(土)5(日)
10(金)11(土)12(日)
17(金)18(土)19(日)

●文壇高円寺古書部(荻原 魚雷)1969年生まれ
●モズブックス(松村 明徳)1970年生まれ
●スクラップ館(扉野 良人)1971年生まれ
●談(折田 徹)1971年生まれ
●古書 さらち(aku)1973年生まれ
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第3部
2008年11月
1(土)2(日)
7(金)8(土)9(日)
14(金)15(土)16(日)

●BOOKONN(中嶋 大介) 1976年生まれ
●縦縞堂(三谷 修)1979年生まれ
●エエジャナイカ(北村 知之) 1980年生まれ
●古書文箱(薄田 通顕)1984年生まれ

++貸本喫茶ちょうちょぼっこ++
大阪市西区北堀江1-14-21 第1北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/img/address.jpg

(付記)
やっぱり秋の花粉症のようだ。例年、八月末か九月のはじめくらいなのだが、今年は二週間も早い。

2008/08/14

下鴨・鈴鹿・上前津

 十日(日)ぷらっとこだまで京都。六曜社で扉野さんと待ち合わせ、出町柳へ。わめぞ民の柳ケ瀬さん、牛越さんと待ち合わせ。
 銭湯(サウナ付)に行って、まほろばに行って、夜の下鴨神社を散歩して、焼肉と中華料理の店へ。あと四日市のメリーゴーランド(絵本の店)の鈴木さん(現・メリーゴーランド京都店)も加わり、三重弁の「おっちゃくい」はどう説明すればいいのかという話などをしたような気がする。「おっちゃくい」は、「やんちゃ」とか「聞き分けのない」といった意味なのだけど、微妙にちがう。

 その後、扉野さんに“かえる目”の「主観」というCDを聞かせてもらう。
 CDの帯に「おっさんの体にユーミンが宿る!」「琵琶湖湖畔の畸人・細馬宏通が綴るイヤんなるほど生々しき歌」とある。
 あまりのすばらしさに呆然。「ふなずしの唄」「あの寺に帰りたい」「女学院とわたし」「女刑事夢捜査」「パンダ対コアラ」(いずれも曲名)。
 詳細は「かえるさんレイクサイド」(http://www.12kai.com/kaerumoku/index.html)を参照。

 十一日(月)下鴨納涼古本まつり、初日。ダンボール(大)一箱分東京に送る。ベンチで休憩中の山本善行さんに『Sanpo magazine 関西大散歩通信』の創刊号(特集・昼ジャズ!)をもらう。

 歩きまわり疲れたので、いったん扉野家で休憩させてもらう。
 そのあと夕方、ガケ書房に行って、かえる目のCDを買う(早速!)。ガケの帰り道、コミックショックの銀閣寺店がよかった。佐々木マキ『ピクルス街異聞』(青林堂)、藤子不二雄A『トキワ荘青春日記』(光文社)などが定価の半額だった。
 そのあと木屋町のディランセカンド。岡崎武志さん、山本善行さん、アホアホの中嶋さんとジュンク堂BAL店の書店員さんが盛り上がっていた。わたしは途中でぬけて、元田中のカフェ・ザンパノに。数時間後、扉野宅で中嶋さん柳ケ瀬さんらと合流。みんな疲れていたのかすぐ寝る。

 十二日(火)メリーゴーランドの鈴木さんに教えてもらった京都四日市間の高速バスをはじめて利用。京都から一時間半(近鉄特急でも二時間半くらいかかる)で四日市に行くというのは半信半疑だったのだが、ほんとうだった。片道二千五百円。でも乗客は五人。採算とれんだろ。廃止にならないことを祈りたい。四日市駅前のアーケード街はシャッターだらけ。三重県でいちばんの盛り場だったはずなのだが、駅の反対側にアピタというショッピングセンターができて、人がそちらに流れているかんじだった。
 アピタ内の宮脇書店(四日市本店)で文庫本を一冊。最近、帰省するとかならず寄る。
 駅から家に電話するが、留守だったので、県道沿いの白揚(新刊書店)の鈴鹿店まで歩く。場所が移転していた。
 その後、鈴鹿ハンターで衣類を買う。ゑびすやのかやくうどん。スーパーサンシで「福助のあられ」(福助製菓)を買う。お茶をかけて食う。子どものころからの夜食の定番だった。「田舎あられ」ともいう。

 母、会うたびに「茶髪にしたろか」といわれる。あとテレビを見ながら「水泳の****はドーピングしてんのちゃうの。バレへんやつ」とかそんなことばっかりいってる。疲れる。

 十三日(水)昼、名古屋。矢場町のリブロに寄って、上前津、鶴舞間の海星堂、つたや書店、ネットワークを駆け足でまわる(時間がなかった)。
 海星堂の文庫棚を見ていたら、さりげなく、佐藤まさあき著『劇画私史三十年』(桜井文庫、東考社)があった。おもしろい。帰りのこだまで読みふけってしまった。
 佐藤まさあきは、大阪から上京するとき、まっ白な背広の上下と黒いカッターシャツ、銀のネクタイという格好で電車に乗った。

《私のイメージの中にある大都会である東京ではこれくらいの服装でコケおどししないとバカにされると思ったからだ。よっぽど東京というところはすごい所だと思いこんでいたらしい》

 つたや書店は、あいかわらず均一棚(五十円〜百円)が充実している。来るたびに十冊くらいは買ってしまう(北杜夫の『マンボウ談話室』『美女とマンボウ』『怪人とマンボウ』『スターとマンボウ』講談社、全部帯付)。
 ネットワークでは『別冊太陽古書遊覧』(平凡社)と『よみがえれ! 抒情画 美少女伝説』(サンリオ)を買う。安かった。

 名古屋駅に戻り、エスカのすがきやラーメンを食ってぷらっとこだまで東京に帰る。

2008/08/06

古本酒場ものがたり

 火星の庭から帰ってきてコクテイルに飲みに行くと、狩野俊さんの『高円寺古本酒場ものがたり』(晶文社)の見本ができていた。

 一九九八年、洋書の古書店「WONDER LAND」が閉店になり、退職金も貯金もなく、国立で店をはじめた。ちょっとデタラメな開店方法なのだが、そのあたりのことも詳しく書いてある。
 あまりおすすめできる方法じゃない。でも何かをはじめるときって、後からふりかえると平気で無茶なことをやっていることがある。
 開店当初、アパートと店の家賃払ったら、ほとんど金が残らない日々が続く。国立時代の常連だった人の話を聞くと、いつあいているのかわからない店だったという。というか、その常連さんが、勝手に休む狩野さんの代りに店番していたという話にはおどろいた。むちゃくちゃだ。

 わたしがはじめてコクテイルに行ったのは、高円寺に移転してしばらくしてから。『彷書月刊』のMさんが「高円寺の古本酒場って知ってますか?」という電話がかかってきて、いっしょに行ったとおもう。
 通いはじめたのは、あづま通りに移転してきてから。うちのすぐ近所。ちょうど夕方から夜の散歩コースにある。今の店に移転したころの事情もこの本ではじめて知った。

 ある人の助言で店の移転を決めるのだけど、それですぐ行動してしまうところがすごい。
 工務店の見積もりを「三〇分の一」におさえる方法も書いてある。これはお金がないけど、店をはじめたい人には、参考になるにちがいない。実行できるかどうかは別だが。
 二十一世紀版の「就職しないで生きるには」みたいな内容になっている。

 ほんの一、二年くらい前まで、店に行く前に今日営業してるかどうか電話してから飲みに行った気がする。定休日以外にも、急に休みになるから、待ち合わせには不向きな店だった。
 今はそういうことはない。
 あいかわらず、いいかげんなところもあるが、そのいいかげんさのおかげで、おもいつきでいろいろなことのできる場所になった。
 あまりにも無計画だから、まわりの人がなんとかしようとする(もしかしたら、そこまで計算した上での深謀かもしれないが、たぶん、ちがう)。

 前半の日記部分を読んでいると、いろいろおもいだす。
 酔っぱらうために飲みにいってたつもりが、気がついたら、品切だった『借家と古本』を復刻してもらったり、『古本暮らし』の出版記念会をひらいてもらったり、店で古本を売らせてもらったりするようになった。

 狩野さんのある種の大雑把さというのは、わたしもちょっとずつ影響を受けた。迷ったときに「とりあえず、やってみよう」とおもうことが増えた気がする。

2008/08/02

そしていわき

 二十九日(火)、火星の庭でカレーを食べて、スーパーひたちでいわきへ。いわきは六年ぶりくらいか。
 漫画家のすずき寿ひさと待ち合わせ。平読書クラブを案内してもらうと、営業時間は五時まで。電話して開けてもらう。
 二階からおじいさんが降りてくる。五十二年やっているという。火星の庭のことも知っていて、前野さんのことを絶賛していた。平読書クラブは、仙台の大きな古本屋とちがって、町の古本屋といったかんじだった。
 色川武大の文庫数冊とマルコ・ペイジ著『古書殺人事件』(中桐雅夫訳、ハヤカワ・ミステリ)など。嬉しい収穫。

 そのあとすずきさんのお兄さん(ということはすずきさんか)、いわきの総合文化誌『うえいぶ』の編集長のWさんと居酒屋で飲む。『うえいぶ』の創刊は一九八八年で前の雑誌から通算すると三十年以上続いているそうだ。
 わたしも次の号に原稿を書いた。すずきさんに「彼はたいへんな怠け者でねえ」と紹介される。人のことはいえないとおもう。
 Wさんからは福島県の文学話をいろいろ聞かせてもらう。今年亡くなられた河林満さんの話など。Wさんはいわき市の図書館の郷土資料専門員。まだ三十代半ばくらいだけど、福島県に関係のある作家や詩人のことを聞いたら、なんでも答えてくれる。
 そのあとすずき寿ひささんの漫画の講義。知らない名前の漫画家や作品名が出てくるたびにメモをとる。話を聞いていると、むしょうに読みたくなるのだが、困ったことに入手難のものばかり……。

 滝田ゆうがティッシュのCMに出ていたという話は知らなかった。

 それにしても、東京、暑いね。ひどい。ミストサウナみたいだ。 

2008/08/01

仙台 古本紀行

 28日(月)、火星の庭の前野さんに萬葉堂書店の泉店を案内してもらう。
 萬葉堂書店は、鈎取店、泉店ともに文庫の均一がすばらしい。均一以外の文庫もほとんど定価の半額。二店で文庫本を三十冊くらい買ったかもしれない。
 単行本も吉行淳之介監修『マジメなマジメなドジな話』(スポニチ出版、一九八二年刊)、山本容朗著『作家の食談』(鎌倉書房、一九八〇年刊)、臼井吉見著『近代文学論争』(上下巻、筑摩叢書、一九七五年刊)、『現代にとって文学とは何か』(読売新聞社編・発行、一九七一年刊)など。

『マジメなマジメなドジ話』は、『世界ドジくらべ』と『世界ドジドジくらべ』の二冊から「よりドジ加減の強いものを選び出したうえ、新たに数話加え」た本だそうだが、はじめて見たよ。カバーは畑田国男。
『現代にとって文学とは何か』の執筆者は武田泰淳、辻邦生、曽野綾子、黒井千次、後藤明生、河野多恵子、柏原兵三、加賀乙彦、有賀頼義、立原正秋、遠藤周作、石原慎太郎、磯田光一、中村光夫、山本健吉、小田切秀雄、進藤純孝、佐伯彰一、奥野健男、森川達也、久保田正文、秋山駿、川村二郎、松原新一。
 昔のアンソロジー本は、見つけたら買っておく。単行本未収録作に当たる可能性も高いし、これまで読んだことの作者の文章にふれるきっかけにもなる。

 萬葉堂書店の泉店の最大の収穫は、『太宰治7』(洋々社、一九九一年刊)という雑誌。
 背表紙に「古山高麗雄に聞く 太宰治の戦争と平和」とあり、見た瞬間、ああーっと声が出そうになった。
 古山さんは仙台の第二師団に招集されるのだけど、そこで太宰治の弟子の戸石泰一と出あう。文学青年同士、すぐ親しくなって、古山さんは戸石泰一の家にも遊びに行っていたという。
 このインタビュー記事についてはまた後日くわしく紹介したい。

 そのあと、ビブロニア書店とS(エス)という店に連れていってもらう。いずれも前野さんに教えてもらわなければ、自分では行けそうにないところにある。
 ビブロニア書店では、『コロンブスの贈り物』(ダイヤモンド社、一九九一年刊)というアフィニスクラブという愛煙家の会が編集したアンソロジー集を買う。この本も執筆者がおもしろい。永倉万治、亀和田武、都筑道夫、小峰元など。
 S(エス)は、古いビルの二階にある看板も何もない店なのだが、二十年くらい続いている地元の古本好きのあいだでは有名な店らしい。
 金井美恵子著『ながい、ながい、ふんどしの話』(筑摩書房、一九八五年刊)、『コミック・ボックス 特集「ガロ」編集長 長井勝一氏のある日』(一九九六年刊)など。あと某画伯のTシャツも買った(プレゼント用)。

 この日、オグラさんのライブのある沖縄館「島唄」に行く前に萬葉堂書店の五橋店にも寄る。
 ちょっと本を買いすぎたか。まあいいか。
 とりあえず、行けるところまで行ってみようとおもう。今は。

(……続く)