土曜と日曜、西部古書会館。初日午前中は人が増えた。図録、雑誌、街道関連、文庫を少々。街道や宿場関連の本を探しているせいか「古道具」の本を見て「古道」の本かと反応してしまう。あと「武士道」や「茶道」など、「道」という字が入った本を見ると「そんな街道があるのか」と……。
この数年、図録関連は同じものを二冊買ってしまうことが多い。記憶力の衰えと蔵書の整理が行き届かず、把握し切れなくなっているせいか。
日曜日、ロマンコミック自選全集、あすなひろし『行ってしまった日々』(主婦の友社、一九七八年)を格安で買えたのは収穫だった。巻末「そんな私・そんな日々」は読者からの便りを紹介し、あすなひろしが返事のようなものを書いている。
水戸の大学生からの手紙に「先生は『シティーボーイ』でもあり、また音楽はジェームス・テイラー、ディブ・ロギンス等のシンガーソングライターがお好きなのではないでしょうか。そして今の一番のお気に入りはマイケル・フランクス?」とあった。
あすなひろしは読者の勝手なイメージに困惑。ちなみに水戸の学生の音楽の好みはわたしと似ている。たぶんこの時代のアメリカの音楽でいえば、スリー・ドッグ・ナイトも好きだったにちがいない。
お便りコーナーは読者の住所が印刷されている(水戸の学生は住所なし)。昔の本、雑誌にはよくあることだった。このコーナーに『わが青春の鎌倉アカデミア』(岩波同時代ライブラリー、一九九六年)などの著作もある脚本家の廣澤榮(広沢栄)の「ヤツが描く人たちはみんなステキなンだなあ」という手紙も。廣澤榮はあすなひろしの漫画の原作・脚色もしていた。
すこし前に『東京古書組合百年史』(東京都古書籍商業協同組合)を入手した。「中央線支部史」に西部古書会館の土足化の改修工事のことが書いてあった。以前は(お世辞にもきれいとはいえない)スリッパに履き替えていたのだが、いつ切り替わったか記憶があやふやになっていた(東日本大震災の前だったか後だったか……)。
お客さんが多いときは入口の前の靴が積み重なり、自分の靴を探すのに苦労したのも今となってはいい思い出だ。
《この改修工事を境に、「B&A」「小さな古本博覧会」「均一祭」などの独自のコンセプトの即売会が新たに登場した》
改修工事は二〇一〇年八月。十一年前か。月日が経つのは早い。