2009/06/30

ここ数日

 仙台から帰ってきて、京都から薄花葉っぱが来る。東小金井の海風で、薄花葉っぱと東京ローカル・ホンクが共演。沖縄そば、泡盛を飲みながら堪能する。
 薄花葉っぱは五年ぶりの新譜『朝ぼらけ』発売記念の東京ツアー、中尾勘二さんもライブ出演。
 ホンクは戸越銀座商店街の歌(「昼休み」)がしみた。
 たぶん気にいるだろうとおもって木下弦二さんに星野博美(戸越銀座出身)のエッセイをすすめてみた。

 月末のしめきり週間に突入しつつ、日曜日に西荻ブックマークの「『昔日の客』を読む」に出席し、二次会にも出る。
 仙台から直行した岡崎武志さん、山王書房の関口良雄さんのご子息の関口直人さん(音楽関係の仕事をしていて、その話もおもしろい)のト−クショー。わたしの席の前には、石神井書林の内堀さん。すぐ横にカーネーションの直枝さん、山王書房の資料集をつくった萩原茂さん、天誠書林の和久田さんと客席もすごい。

 山王書房で野呂邦暢が諌早に帰る前に購入したといわれる『ブルデル彫刻作品集』(筑摩書房、一九五六年刊)を持っていって、会場で見せた。
『ちくま』で『昔日の客』と野呂邦暢の原稿を書いている途中、彫刻にまったく興味がないのに衝動買いしてしまった本なのだが、買ってよかったとおもった。

 二次会で内堀さんが『spin』の北村知之君の文章をほめてた。
 その話を聞いて、そろそろ退屈君もブログ以外の、紙に印刷される形の文章(ミニコミでもなんでもいい)を書いてほしいとおもった。まあ、本人に会ったときにいえば、いいことなのだが、たぶん、そうおもっている人はわたしだけではないはず。

2009/06/23

わめぞ縁日in仙台

 チョコレートを食い、コーヒーを飲み、原稿四本、うち三本を送ってから、新幹線に乗って仙台へ。
 仙台通いをはじめたのはちょうど昨年の六月だった。その後、七月、八月、十二月と今年の四月、六月と一年で六回、仙台に行ったことにある。まだ秋の仙台には行ってない。
 春、夏、秋、冬のすべての季節に行ったことのある土地は、故郷の三重、今住んでいる東京をのぞくと名古屋と大阪と京都の三都市である。
 なんとか今年中に仙台の四季を体験したい。

 火星の庭に着くと、わめぞの古本縁日がはじまっていた。ハチマクラが大盛況だ。
 近所の中華屋でたんめんとぎょうざを食う。
 文壇高円寺古書部は火星の庭で常設なので、何もすることがない。
 そのあと書本&cafe マゼランに行く。
 珈琲を飲んで、本を見て、気がつくと、宴会の時間になる。
 手打ちうどん、カレー、うまい料理が次々と並ぶ。
 赤ワインと白ワインが出てくる。
 食って、飲んで、寝てしまう。起きると、藤井書店のリボー君や白シャツ王子が妙なテンションになっている。

 そういえば、この日、昼、海月書林さん、夕方、マゼランのお客さん、あと宴会中に「寝起きですか?」といわれた。
 一日三回も「寝起き?」といわれたのは、生まれはじめての経験かもしれない。
 ほんとうに寝起きだったのは、宴会中だけなのだが。

 翌日、昼起きて、前野宅の戸締まりをして、火星の庭に向かう途中、道をそれてしまったので、そのまま尚古堂書店をのぞいて、青葉城を見に行く。
 青葉城、坂道がおもったよりたいへんだった。ちょうど帰りぎわに小雨がふりはじめる。
 るーぷる仙台(バス)に乗る。運転手が観光案内(三分に一回くらい笑いをとろうとする。小田和正が東北大学卒であることを知った。あとは忘れた)をしながら走る。
 定禅寺通り市役所前で降り、火星の庭へ。
 瀬戸さんと向井さんが、めぐるちゃんと遊んでいる。

 わめぞ縁日、あっという間だったなあ。
 仙台の人には、本家わめぞの外市、みちくさ市に遊びにきてほしいです。

 打ち上げのあと、東京に帰るわめぞ組を仙台駅で見送って、もう一軒飲んで、前野宅にもう一泊させてもらう。
 次の日、駅前のビルの古本市、ジュンク堂のジュンちゃんに挨拶して、東京に帰る。

2009/06/17

Love is

 仙台の火星の庭、それから七月の外市に出品する本の値付をする。
 蔵書をどんどん入れ替えたい気分。
 本棚(三本ほど)をもらったので、組立作業もした。手作業というのは、気がつくとあっという間に時間がすぎてゆく。

 JR高円寺駅の総武線のホームに、おかしの自動販売機がある。とはいえ、自販機でおかしを買う習慣はなかったので、気にしていなかったのだが、よく見ると、ブルボンの自販機で、関西方面に遊びに行くたびに五袋くらいずつ買い求めていた「羽衣あられ」もあってビックリした。
 三重県の鈴鹿にいたころ、「羽衣あられ」は缶に入ってジュースの自販機で売っていて(という話を人にしても信じてもらえない)、わたしはこのあられが好きだった。

 今週発売の『サンデー毎日』に村上春樹の『1Q84』(新潮社)の書評をかきました。

 書けなかったというか、書かなかったことをいうと、ちょっとしたきっかけで異次元というか異空間にまぎれこんでしまう話といえば、松本零士の漫画でもおなじみのパターンなんですね。主人公のキャラクターが、あまりにもちがうので、まったく似ている気がしないけど、四畳半の畳をめくったり、近所の道の角をまがったりすると、(唐突に)ヘンな世界につながっているというような作品(『四次元時計』『闇夜の鴉の物語』いずれも講談社漫画文庫など)がよくある。

 東京堂書店で橋本治著『大不況には本を読め』(中公新書ラクレ)を購入。『日本の行く道』(集英社新書)の続編としても読める本かも。

 東京古書会館、新宿展の最終日をのぞいて帰る。

 家に帰ると、季村敏夫、扉野良人編『Love is 永田助太郎と戦争と音楽』(震災・まちのアーカイブ発行、みずのわ出版製作)が届いていた。

 五月に扉野良人さんと倉敷に遊びにいった帰り道に神戸のみずのわ出版に寄った。
 スーパーの上の階にある、生活感あふれるというか、貧乏学生の下宿のような雰囲気の出版社で、みんな日本酒を飲んでべろんべろんになって仕事をしていたことをおもいだした。
 永田助太郎(一九〇八年〜一九四七年)は、戦前に『新領土』などの詩誌で活躍していたモダニズム詩人で、鮎川信夫や田村隆一にもすくなからぬ影響をあたえた人物でもある。
《愛は
 みんなの王様ヨ みんなの王様
 最初に渾沌あり
 次いで鳩尾の大地と
 エロス エロスうまれたりとナ
 オオ ララ オオ ララ》(永田助太郎「愛はⅠ」抜粋)
 昔の詩人を紹介するというだけでなく、「スズメンバ」というバンドのメンバーの本田未明と太田泉のユニット「クルピア」が、その詩に音楽をつけ、(即興で)演奏するといった試みもおこなわれている。

 永田助太郎を知らない人に、いや、そもそも詩自体に興味のない人に、そのおもしろさをどう伝えるか。
 かなり斬新な実験をしている本だとおもう。

2009/06/13

わめぞと仙台その他

「空想書店 書肆紅屋」で、上り屋敷会館で開催されたシークレットワメトーク「Take off Book! Book! Sendai!」の模様を公開。労作にして傑作(会場でものすごく集中しながら、紅屋さんがメモをとっていた姿が忘れれない)。

「一箱古本市」「ブックオカ」「ブックマークナゴヤ」「外市」といった一般参加型の古本イベントが出てくるまでの流れの話、向井さんの古本業界の現場報告(分析が鋭い)はいろいろ考えさせられた。

 その日、わたしも会場にいて、二〇〇二年十月にリブロ池袋&青山店でおこなわれた「本屋さんでお散歩〜『sumus』が選ぶ秋の文庫・新書100冊」フェアのことが語られ、懐かしくおもった。青空古本市の『古本共和国』に『sumus』同人が関わったのも同じころだったんですね。

 関係ない話をすると、ちょうどそのころ、結婚した。当時、定収入はないわ、貯金はないわ、この先どうなるんだという状態で、毎月、古本とCDを売って家賃を払っていた。一日二、三枚の原稿を書くと疲れて何もできず、この先、ライターとしてやっていけるのかと悩んでいた時期でもある。

『sumus』関係の話では、この年の秋、山本善行さんの『古本泣き笑い日記』(青土社)が刊行、岡崎武志さんが国立に引っ越し、あと年末に林哲夫さんの『喫茶店の時代』(編集工房ノア)が、大衆文学研究賞を受賞している。

 シークレットワメトークで、古本ヒエラルキーの変化の話を聞いていて、中央線沿線住民としては「おに吉」のことが抜けているかなともおもった。

 二〇〇〇年代以降、中央線沿線(とくに西荻窪)で新しい古本屋がどんどん開店しはじめたのも、今おもうと古本業界の変化の兆しかもしれない。当時はまったく気づいてなかったが。

 いろいろ記憶を補うために、火星の庭のホームページの二〇〇六年十月の「晩秋の東京行脚」(前編・後編・最終編)を読み返したら、当時の前野さんの行動力もすごい。
 秋の一箱古本市(写真に塩山さんらしき人が)、神保町の古書会館に寄って、次の日、海月書林があった荻窪の「ひなぎく」、その後、ささま書店(レジにNくんがいた)、高円寺の古本酒場コクテイル、それから荻窪のボーリング場に行って、わたしもそこに合流して、そのあと居酒屋で飲んだ。

 さらに次の日、早稲田の古書現世、経堂のロバロバカフェ、青山の古書日月堂とまわって、仙台に帰っている。
 まさに怒濤というかんじだ。

 あとワメトークで、人のつながりの源流みたいなものが、ほとんど南陀楼綾繁さんにつながるという古書現世の向井さんの話も印象に残った。

 わたしが向井さんと知り合ったのも南陀楼綾繁さんが主宰していた「ブックマンの会」がきっかけだった(とおもう)。古書現世には行っていたが、ちゃんと話をしたことはなかった。

……というわけで、BOOK! BOOK! Sendaiの告知を——。

BOOK! BOOK! Sendai × わめぞ from 東京 コラボイベント
古本縁日 in 仙台 〜〈わめぞ〉の古本・雑貨市〜

古本あり雑貨ありの古本縁日が東京から大移動して、仙台のブックカフェに初登場!マゼランと火星の庭に、「わめぞ」の古本と雑貨がドーーンと並びます。どなた様もたのしめる敷居のひくい縁日気分の古本市です。

■日時
2009年6月20日(土)〜21日(日)
■会場
book cafe 火星の庭  http://www.kaseinoniwa.com/
6/20 11:00〜20:00  6/21 11:00〜17:00
書本&cafe magellan(マゼラン)http://magellan.shop-pro.jp/
6/20 10:00〜19:00  6/21 11:00〜17:00
*2会場ともに入場無料(予約不要)
 

■こちらも併催しております!
武藤良子個展「みんな夢の中」
6月18日(木)〜7月6日(月) 会場・火星の庭

また6月27日(土)には、仙台のサンモール一番街で「一箱古本市」も開催します。
11:00〜17:00

問合せ先:杜の都を本の都にする会
BOOK! BOOK! Sendai http://bookbooksendai.com/
わめぞ http://d.hatena.ne.jp/wamezo/

2009/06/11

ひとりっこのツケ

 月曜日、BOOKONNの中嶋大介さんと退屈君、火曜日、扉野良人さんとPippoさんが高円寺にきて部屋飲み。扉野さん、Pippoさんとはいろいろ詩の話をしたのだが、まさかヘルマン・ヘッセの話でもりあがるとはおもわなかった。

 辻征夫の『かんたんな渾沌』(思潮社)の「谷川俊太郎についてのいくつか」という論考を再読した。
 谷川俊太郎はひとりっこで、そのせいかどうはわからないが、他人とどろどろするような関係に入らないし入れなかったと語っている。

《つまり、自分の鬱屈とも無関係でいられたみたいなさ、ま、それはたぶん、心理学者がいいうみたいに、母親に充分に愛されて一人でも安定していたということだと思うんですね》

 そう自己分析したあと、「ぼくはいま、そのツケを払っているんですよ、いってみれば」とつけくわえる。
 谷川俊太郎が払っているという「ツケ」がなにかはすごく気になる。

 意識の中では、人間との関係に入っていかなければならないとおもっている。それで入っていくのだが、どこか距離がある。
 四十代のはじめごろ、「私は私は」という自己表現の呪縛から逃れたという。
 ただし——。

《詩人の主体というのかな、どう生きるべきかみたいな、そういうものを根源に置かないとね、どうも詩が駄目だという感じがあるんですよ。いつでもその間を揺れ動いて来たんですね》

 この「揺れ動いて来た」という言葉にはっとさせられた。
 谷川俊太郎が、そういったことを考え、試行錯誤していたのは、四十代のはじめごろだった。

 わたしは詩を書いているわけではないが、昔とくらべれば、文章も自分の考え方も安定してきたとおもう。同時に谷川俊太郎がいうところの「主体」も、以前とくらべて弱くなってきた。
 不安定だけど(不安定だからこそ)、おもしろい文章がある。
 安定しているようにおもえるのは、いいたいことがこんがらがってうまく書けないことをはじめから書かず、書きやすいものだけを書いているからかもしれない。

 目先の仕事におわれて「どう生きるべきか」をかんがえなくなっている。「思想」あるいは「文学」にとって、いちばん大切なことは「どう生きるべきか」という問いのような気もする。

2009/06/07

おぼえがき

 最近、仕事のあいまの休憩所として、高円寺南口のルネッサンスという名曲喫茶に行くようになった。おそらく店の人は、中野の名曲喫茶クラシックの元関係者とおもわれる。最初に代金を払うシステム、調度品、レコード、いずれもクラシックを知っている人なら、きっとなつかしいとおもうにちがいない。ただし、床は傾いていない。

 ルネッサンスに行く前、都丸書店、大石書店、アニマル洋子をまわる。頭が古本の棚に反応しない。
 散歩を続ける。中通り商店街に行くと、素人の乱で味二番のイスが売っていた。味二番は、素人の乱の向いの、カツ丼やオムライスやカレーもある中華屋で、上京当初、すぐ近所に住んでいて、とにかく安かった。
焼きめしをよく食った。
 上京して半年ほど住んだ下赤塚の寮から高円寺に引っ越したときに、友人が味二番の角で車をぶつけて、修理代十三万円……。以来、引っ越しは“台車”でするようになった。

 何年か前に、中通り商店街のかきちゃんというラーメン屋もなくなった。この店のからあげラーメンとスタミナ丼が大好物だったので、閉店を知ったときは悲しかった。

 古本酒場コクテイルの石田千さんとのトークショーもどうにか終了。
『きんぴらふねふね』の話にもっていかなくてはとおもいつつ、ひたすら雑談になってしまった。
 仙台からブックカフェ火星の庭の前野さんが上京する。
 後半、東京堂書店の畠中さんにも挨拶してもらった。

 週明けのしめきりがいくつかあり、午後十一時すぎくらいに帰る。

 翌日もコクテイル。バサラブックスの福井さん、アスペクトの前田くんと飲む。

 午後十二時すぎに、火星の庭の前野さんも合流(新宿で南陀楼さん、古書現世の向井さんたちと飲んでいたらしい)し、コクテイル閉店後、前田くん、前野さんと三人で部屋飲みになる。前野さん、酒、強すぎる。午前四時、解散。

 土曜日、自分でも酒くさいのがわかるくらいの状態で仕事。まったくはかどらず、『カラスヤサトシ』(講談社)の四巻を読む。

 カラスヤサトシが宇野浩二のファンであることを知る。 

2009/06/01

六月

今日から仙台で「Book! Book! SENDAI 2009」がはじまります。
わたしも「わめぞ」の「古本縁日 in 仙台」(六月二十日、二十一日)にあわせて、仙台に行こうとおもっています。
ブックカフェ火星の庭の「文壇高円寺古書部」も大補充しますよ。

すこし先ですが、七月から河北新報の夕刊で隔週で二ヶ月間、エッセイを連載することになりました。

それから六月四日(木)、古本酒場コクテイルにて、石田千さんの『きんぴらふねふね』(平凡社)の刊行記念トークショーを行います。
開場:午後七時、開始:午後七時半。チャージ千円(要予約)。
聞き手はわたしです。

古本酒場コクテイル 店長日記(http://blog.livedoor.jp/suguru34/)に
店の電話とメールアドレスが出ています。