2021/09/18

小休止

 木曜日、御茶ノ水駅から坂を下って東京堂書店と三省堂書店で新刊本をチェックする。以前、松本武夫著『井伏鱒二年譜考』(新典社、一九九九年)を見かけた神保町の古本屋に行ってみたのだが、値段を見てひるむ。松本武夫は『井伏鱒二自選全集』の年譜の作成者でもある。「井伏備忘録」はあと二回ほど書く予定——。

 そのまま九段下方面に歩いてブンケンロックサイドへ。店頭のワゴンで図録が半額で売っていた。『特別展 弥次さん喜多さん旅をする 旅人100人に聞く江戸の旅』(大田区立郷土博物館、一九九七年)を買う。以前、滋賀の草津宿街道交流館に行ったときにこのパンフレットを閲覧して、いつか欲しいとおもっていたのだ。ようやく買えた。あと別の店で『生誕一〇〇年 漂泊の俳人 種田山頭火展』(毎日新聞社、一九八一年)と『産經新聞創刊六十周年 もうひとりの芥川龍之介 生誕百年記念展』(産經新聞社、一九九二年)も。『山頭火展』は百八十頁、『芥川展』は百六十頁以上もある。新聞社主催の文学展の図録は力作揃いだ。家に帰り、積ん読状態の図録を整理していたら『もうひとりの芥川龍之介』は入手済だったことが判明した。よくあることだ。

 先週の水曜日、毎日新聞夕刊にかごしま近代文学文学館の「向田邦子の目 彼女が見つめた世界」の記事があった。今年没後四十年だったことを思い出す。かごしま近代文学文学館は過去に梅崎春生や黒田三郎の企画も開催していた。鹿児島は父の郷里(生まれは台湾)で五歳から高校卒業まで大口市(現・伊佐市)にいた。父方の親戚とはわたしはまったく交流がなかったが、年に一度、芋焼酎を送ってもらっていた。家には黒伊佐錦と伊佐美があった。父は年中お湯割りで飲んでいた。