日曜日、朝五時半に起きて、長野に。長野は小布施の一箱古本市以来だから三年ぶり。
書店員兼フリー編集者のTさん……本名でいいか……塚田眞周博さん(後藤明生の電子書籍コレクションなどを作っている)の郷里の田んぼの稲刈りを手伝いに。
すこし前に「半農半筆」のような生活が理想だといったことを書いたら、「稲刈りしにきませんか」と誘ってくれたのである。
長野といっても、上田のちかく。いいところだった。稲刈りといっても、わたしが手伝ったのは稲架掛け(はぜかけ)といわれる作業。米を天日干しするために、稲を束ねてひたすら積んでいく。
親戚の人も来て、作業は昼すぎに終わる。車でちかくの温泉に。入浴料五百円。贅沢。ねずみ大根をしぼった汁にみそをといて食う「おしぼりうどん」もうまかった。
夕方はしなの鉄道で長野駅に出て、遊歴書房と『街並み』などを刊行しているナノグラフィカを訪ねる。遊歴書房で団地堂をすすめられ、地図に印をつけてもらい、そこで塚田さんの親戚の長野在住のイラストレーターと待ち合わせ。
あまり時間がないということで、駅前の居酒屋に。そのあとラーメン屋に行って、ハイボールと餃子。塚田さんはガリガリ君サワーを注文していた。
長い一日だった。長野はまたじっくり散歩してみたい。
長野市の人口は三十八万人くらいだけど、このくらいの規模の、自然もあって古い町並みが残っている地方都市は暮らしやすそうな気がする。
たとえば、都心に二時間くらい出てこれる場所(徒歩で生活できる古本屋と飲み屋と喫茶店がある町)を拠点にして、畑(ジャガイモとかネギとか)を作って、にわとりを飼う。余裕があれば、都内に安い部屋を借りて……。
最近そんなことをよく考える。ただし、候補地が増えてくるにしたがい、しばらくは東京に住んで、ときどき旅行で訪ねるほうがいいのではないかともおもう。
翌日は午前中に駅まで送ってもらい、上田城跡、小諸の懐古園などに行く。ひとりでぼーっとベンチに座っていたら、年輩の観光客から「写真撮ってください」と声をかけられまくる。
カフェイン中毒の禁断症状が出てきたので、小諸の喫茶店で珈琲を飲む。小諸は「あの夏で待っている」、上田は「サマーウォーズ」の舞台で、あちこちにアニメのポスターが貼ってある。聖地巡礼に来た人みたいだ。
小諸から軽井沢に出ると、ちょうど横川駅行きのバスが止まっていたのですぐ乗る。横川は峠の釜飯で有名なところだけど、はじめて降りた。横川から高崎駅。いちど高崎駅の改札を出て「群馬いろは」でうどんやら何やらを買う。
高崎からは湘南新宿ラインで東京へ。
現実と向き合わねば。